第18話

No.18
618
2021/11/14 01:21









客室に案内されるや否や、
若干声を荒らげた岩田が入ってくる。





剛典「…なんだよあのぎこちない応対の仕方は。」
『……申し訳ございませんでした』
剛典「これから先、父親はあの人になるんだぞ」
剛典「愛想よく接するのが最低限の務めだろ。」



『……』

剛典「返事しろっつーの、」



『体調が悪いので別の部屋借りますね。』
『ベッドはひろぉくお独りでお使いください』
『私はここではもう寝ないのでいいです、では。』




勢い任せで物事を済ませようとする悪い癖、
また出ちゃったな。
衝動に身を任せてドアに足を進めた。



剛典「おい、どこにいく。」
『頭冷やします。あなたの癪に障ること、
したくないので。それが妻として最低限の務め。』
剛典「だからってなんで外に行こうとするんだよ」


『…っ、お願いだから…もう私を解放して………』
剛典「……」
『これ以上、もう限界なんです…、、』





腕に彫られた正妻の文字、すっかり移ってしまった
プールオムの匂い。
滅多に洗濯できない素材を着てしまったばかりに、
この先、嫌でも思い出される。
身体まで、岩田の思惑通りに仕上がっている
そんな自分らしさの無くなった自分が気持ち悪くて
吐き気さえ覚える。







剛典「……辛いのはわかった。苦しいのもわかった」
剛典「でも、離すことはできない。」
剛典「それが、俺の使命であって、お前の運命さだめだよ。」




腕をグッと掴まれて、そのまま収められる。





剛典「俺だって、結婚したくねぇよ。」
剛典「でもあの人の発言は絶対だから。」
剛典「お前んとこの婆さんと同じようにな。」








私も苦しいけど、その分この人も苦しい。
あんまり考えたことがなかった。
時折見せるやるせない雰囲気は、これだったのね。




部屋も飛び出すにも飛び出せないまま、
今日もまた、私はプールオムに包まれる。

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