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第1話

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2019/03/26 07:37
 『다움,그쪽에가요.』
(今度、そっちへ行きます)


たった1文。それでも心が踊るのは、差出人が、他でもない彼だから。


付き合って2年。ごくごく一般人の私が世界的アイドルと出会ってもうそれだけ時間が経った。180度変わると思ってた日常は、何一つ変わらなくて。私の見てる世界が少しキラキラしたぐらいだった。


日本でコンサートをする時はいつも私に会いに来てくれる。会う度日本語が上手くなる彼に私は釣り合っているのかな。私の想いはしっかり伝えられているのかな。考えは止まらずに、次に会える日を指折り数える。5日。たった5日。120時間。7200分。432000秒。電卓を叩く速さが尋常じゃないのは、分かってる。でも、不安で。私が淡々と過ごす時間に彼は、新しい人と沢山出会ってる。その中にはすごく綺麗で、素敵な人が溢れるようにいて。…私を忘れないでいてくれてるのかな。


あっという間に時間が過ぎ、待ちに待った日が来た。17時にインターホンが鳴るはず。彼が好きなオムライスを作って待つ。

ベルが鳴る。

彼が部屋に入ってくる。

ご飯を食べて、一緒に過ごして。



朝起きると、いつも彼はいない。



怪しまれないため。マネージャーにも知られていない私の存在を悟られないため。日が昇る前に静かに彼は出ていく。引き止めないのは…彼が大切だから。乗った船には最終目的地がある。彼の夢を潰さぬよう、必死に目を閉じた。

「안녕.감기조심하세요.화이팅 」
(おはよう。風邪に気を付けて、がんばれ)

短く済ましたメールを送る。多くは語らず、不難に。それが彼を守るためだから。

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