第3話

第二
28
2018/09/25 11:48
 チク、タク、チク、タクと、時計の針が時を刻む。
 時刻は午後10時を指していた。
 「ありゃ、もう10時か。軽く二時間は話してたんじゃない?」
 サツキがそう声を上げたことで、私たちは桃色の世界から一気に現実へと引き戻される。
 消灯時間にはまだ余裕があるのに、何故サツキは声を上げたのか。
 理由は簡単。私たちはまだ入浴をしていなかったからだ。
 けれど、この旅館の大浴場は現在故障中。幸いシャワールームは一部屋に一つずつ取り付けられているものの、大浴場並の広さなどあるわけもなく、一人ずつでしか入ることができない。
 これらのことから、私たちは入浴を後回しにしていたが、もうそろそろ入らないと消灯時間に間に合わなくなりそうだ。
 「あのさ、私先にお風呂入っていい?」
 遠慮がちに手をあげながら、アイは言う。
 特に断る理由も無いので、私たちは申し出を快諾した。
 ありがとう、そう笑顔で言ってシャワールームへと入っていくアイの背中を見送り、さてどうするか、とサツキの向かい側に座る。
 何か話すとしても、先程話題が尽きるまで話してしまった。だが、こうやってただなにもしないでいるのも勿体無い。
 だって、あと少しで最後の修学旅行は終わってしまうのだ。
 そう思考を巡らせている時だった。
 「きゃあああああああああああ!!」
 つんざくような悲鳴が、部屋を駆け巡る。
 間違いない、この声は、
 「アイッ!!」
 私たちは急いでシャワールームへ向かう。
 シャワールームの扉は、半開きになっていた。
 勢いよく扉を完全に開け放つ。
 そこには、







 誰も居ないシャワールームが広がっていた。

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