少し遡り....まだUSBメモリ&レポートの件で悩みに悩みまくっていた頃。
杉原要はその場で立ち止まり、霞城と楠見の二人を見つめた。
もちろん、二人も顔を見合わせ杉原の次の言葉を待っていた。
話し始めて考えることが疎かになっていたんだと思う。
私は、言いたいとか言いたくないとか、そんな思いがなんにもなくて、ただ単純に、事実を確かめて理由を聞きたいと思ってる。
また、二人は杉原を見つめる。
いつの間にか仮入部の部室に辿り着いていた。
鍵は空いてなかったから、そのまま立ち話をすることになった。
そんな二人の会話を聞いていたら、ちょっと安心してしまった。
管理していた私の責任は、消そうとしても消えるものでは無いというのに....
良い友達で、優しい人達だ。
そして、スマホをいじりながら淡々と、その声を聞いてる人物がいた。
3人の会話を忘れてしまうような日数が経ち、やっと没頭する時間が取れた青鷺は、少し悩んで考えていた。
たった数十秒の会話でも、把握できるものがあった。
職員室前で霞城先輩と対面したとき、杉原要にするか霞城胡桃にするか迷った。
どちらも同じくらい、全校生徒の信頼を得ていたからだ。
もう一度、その音声を再生する。
聞き終わったら違う音声、その次でさえ違う会話。
今度は、協力関係を結ぶことになった杉原要の考え方に注目して...
直接話したその直感と、言葉遣いと、楽しめるかという事実から、今でも俺は杉原要を選択するだろう。
圧倒的な違いは、真面目さだ。
杉原要は、少しユーモア溢れるようだ。
言葉を使わずとも察してくれるその鋭さは、俺が楽に過ごせるから。
霞城胡桃には悪いけど、レポートの件を塵のように背負ってもらおう。
誰に指摘されるわけでも、自分で自覚するにも至らず、雰囲気的にそうさせる。
USBメモリを投げる判断は、正しかったというわけだ。
そして現在....
青鷺は、杉原要のポケットから回収した盗聴器を落として踏んで。
腫れた腕を隠し薬を作り出す。
作り出すから、グレーライン。
杉原要の人生を壊すほど、俺は暇でもないし興味もない。
利用する。
とことん利用し、情は捨てよう。
この期間の会話の特徴、関わっている友人関係、知っておいて損はない。
いざというとき、使える判断材料だから。
最後にもう一度...粉状の薬を飲み込んだ。
痛覚を使い無理やり起きる、とても原始的なやり方だが、薬学の知識は最低限度、効率重視で生きている。
荷物をまとめて俺しか知らないルートを辿る。
鍵が壊れたこの裏口なら、教師に声をかけられない。
貧乏揺すりしてリビングで待つ。
夕飯は爽上先生が作り終わり、本当にただ待っているだけ。
ゴミ箱から睡眠薬の袋を取り出しては確認し、また捨てる。
時刻は午後9時...
教師よりも生徒の方が帰りが遅いなんてこと、本当なら有り得ない。
そう....本当じゃないから、有り得てしまうのだ....
迎えに行こうと立ち上がったその瞬間、玄関の開く音がする。
急ぎ足で自室に向かう。
その足音に慌てて、その担任は追いかける。
どうやら、爽上先生の方が圧倒的に早かったみたいだ。
青鷺の前に立ちはだかる。
無表情のまま、観念したようにリビングに戻っていく。
視線も表情も歩き方すら、いつもの思優と変わらない。
でも、帰ってきたときの声色だけは、聞いたことがないくらい隠せてなんていなかった。
リビングに戻ると同時に、青鷺はクルッと方向転換してまたドアに向かう
だが、どちらも諦めが悪いようだ。
思優が座り込むと同時に俺も目の前の席に座り込む。
いつも以上に視線は合わないが、雰囲気や仕草などの発言以外、普段の思優と変わらない。
本当に流石と褒めたいけど、今日はお説教と進ませてもらう。
あの時みたいに、黙り込む。
俺が思優の感情を読み取ることなんて出来なくて、話すことが弱点であること、つまり、そういうことなのだろうか。
だが、黙っているということは考えているということでもある。
思考そのものが武器になってる思優にとって、この時間は有利に働く。
今日こそは、ちゃんと聞きたい。
てか、もう俺は俺のやり方を強行する。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。