プリ小説

第3話

異色な世界
《テオくんside》




テオくん
…んぁ、





頭上でiPhoneが振動しているのに気がつき

数時間の眠りから、俺は目を覚ます。





マネージャーだ。





今誰かと会話を交わすのは

気分が乗らなかったため、LINEを飛ばした。





…また事務所か。





送られてきた文字を見て思う。





じんたんが亡くなってから仕事が格段に増えた。





" スカイピース " としてではなく、





" テオくん " としての。





俺がそれに対して渋い反応をすると

" テオくんがやるべき仕事だからさ! "

事務所の人は決まってそう言う。





なんだか

じんたんがいなかったかのようになっていて

すごく、悔しかった。





俺の自慢の相方なのに。





俺の自慢の恋人なのに。





" スカイピース " にしか出来ないこと、あるのに。





じんたん、なんでこんな世界に

俺を置いていったんだよ、なあ。





今更僻んでも仕方ないのだが。




☆イニ☆
…テオくんは独りじゃないよ





やっべえ、俺、





ついに幻聴まで起こし始めたか、





" じんたんロス " 。





聞こえるはず、ないのに。





でも、安心するんだよな、この声。





ほら、今だってこの声を聞くと

勝手に涙が俺の頬を伝っていくよ。




☆イニ☆
…泣かないで





難しいこと言うね、





そんなお願い、流石に聞けないや。





俺の脳が勝手にじんたんの声を構成する。





せめて、現れてほしいのに、





なんで声なんだよ、




テオくん
なあじんたん、会いたいよ





俺にじんたんの声が聞こえてるんだから

じんたんにも俺の声が聞こえてるって

期待くらいしてもいいでしょ?





…返事、来ないかあ、




☆イニ☆
…ここにいるよ、





まさか。





嘘はつかないでよ、じんたん。





期待しちゃうじゃん。





いつの間にか閉じていた目を開ければ

そこにはもしかしたらいるんじゃないかって

変な期待、絶対に叶わない期待。





ゆっくりと瞼を持ち上げると

気づかないあいだに強く目を閉じていたのか

前がぼやけてよく見えなかった。





…誰?





俺の前に立っているのは、





だんだん視界が鮮明になっていく。





見た事のあるシルエット。





というより、俺が大好きだったシルエット。




テオくん
…なん、で?





そこにいたのは、紛れもなくじんたんだった。




☆イニ☆
…久しぶり





ちょっと照れくさそうに笑う姿。




☆イニ☆
…幻覚なんかじゃないよ?





じんたんを見つめて

何も声に出せない俺に気づいたのか

そんな事を言う。





久しぶりに見るその姿に

俺の弱った心はみるみる縮んでいって

ついに萎んで、大量の想いになって溢れてきた。




☆イニ☆
ちょ、だから泣かないでってばっ、





ああ、変わっていない。





普段泣かない俺が泣くと

じんたんはあたふたする。





本物だ。





邪魔な涙を拭って

じんたんのもとへ駆け寄る。





大きく両手を広げて

じんたんを包み込もうとする。





やっと届いた、と思ったのに

俺の腕の中には何もなく

じんたんはただ後ろにいるばかりだった。




☆イニ☆
…ごめんね、触れない、の





仕方ないね、と言うじんたんは

少し哀しそうに微笑みながら手を伸ばす。





慎重にその手を掴もうとするのに

その手には触れられなかった。





まるで違う世界にいるかのように

俺が触っているのはただの空気だった。




テオくん
…なんでいる、の?





1番聞きたかったこと。





こういうのって

大体は何か後悔があって成仏できないパターン。




☆イニ☆
…生まれ変われるかも、しれないんだってさ





じんたんは俺に全部話してくれた。





じんたんがもう息をしなくなったあと

どんな世界に行って

どんな人に会って

どんな事を言われて

どういう風に、何の目的で戻ってきたか。





そして、どうやったら生まれ変われるのか。




☆イニ☆
…またテオくんとスカイピース、やりたいからさ?





弱々しい声で言うじんたんを

精一杯手助けしようと思った。





できる限り、協力しようと思った。





俺も、またスカイピースやりたいから。





正直まだ今起こっていることを

すべては理解していない。




☆イニ☆
違う人の意思で生まれ変わる場合と、その人の意思を持ったまま生まれ変わる場合があるんだって、





もしかしたら俺

自分の意思を忘れちゃうかもしれない、





じんたんがそう言う。





大体の人はそのリスクを恐れて

生まれ変わるチャンスを捨ててしまうらしい。





じんたんはそのリスクを背負って

俺のために戻ってきてくれたんだから。




テオくん
…絶対大丈夫だよ、" 俺ら " なら





そんな根拠の無い言葉をかける。





そこからだった。





俺の、





俺らだけの、





異色な世界の始まりは。

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ぴぃち
ぴぃち
どうしようかな〜..って、