《テオくんside》
事務所に行く準備をしてから
割と時間が余ったので朝ご飯を食べている。
じんたんはもちろん食べれないため見るだけ。
食べることが好きなじんたんにとって
もはや公開処刑だ。
匂いは分かるんだ、と謎が多い。
じんたんにいろいろ説明してもらったけど
それ以来じんたんは何かをする気配はない。
俺がそう聞くと、う〜ん、とすこし考えた後
俺正直ね、と話を切り出した。
本当に生まれ変わる気あんの?
こいつ、
俺でもそう思うほど
じんたんは馬鹿げたことを口にしている。
同意を求めるように首を傾げるじんたん。
いやそんな可愛いことされても
分からないものは分からないから、
とは言いつつ
すこし心当たりがあるような気がしてくる。
珍しくじんたんが
俺を逆手にとるような台詞を吐いた。
じんたんの言葉の意味を理解してから
顔の温度が上がったのは否めないんだけど。
なんだよそれ、
まるでもう思い出せないみたいな。
胸に突っかかったその想いは
口にすることが出来なかった。
所詮、俺の人生ではないから。
それに、
そう言ったじんたんの笑顔が輝いてたから。
久しぶりのその眩しい笑顔に負ける。
やったあ、と飛び跳ねる。
さっきまでは眺めていた俺の朝食を
今度は早く食べて、と急かしてきた。
表情や行動がコロコロ変わるのも可愛い。
なら俺も
じんたんとこの2週間を、楽しもう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。