第17話

透明人間①
662
2018/07/08 16:35
【じん目線】
付き合ってる設定






ある夜、コンビニからスカイハウスに帰ると
テオくんが泣いていた。
じん
どうしたの

パンパンに目が腫れ上がっている。
テオ
一緒に病院に来て

数十分走って大学病院についた。

テオくんの知り合いが医者らしい
じん
テオくんに何かあったんですか?
お医者さん
寺島はある病気にかかってしまった。
不治の病だ。原因も分からないし、
今のところ有効な治療法もない


テオくんはずっと激しくむせび泣いている。
でも、まったく訳が分からないままだ。
じん
一体なんの病なんですか。
テオくんはなんでこんなに
泣いているのですか。
お医者さん
君は怖くないの?


怖くない、と言えば嘘になる。


だが治らないからといって
テオくんの命がすぐに消えてしまうのは…

何かできることがあるかも知れない。


お医者さんは息を飲んでいった。
お医者さん
正式な病名は人体不可視化症候群。
最近存在が確認されたばかりの、
新しい難病。
透明人間病と言えばわかりやすいかな。


透明人間…
お医者さん
この病気にかかると、患者はだんだん
周りの人間に認知されなくなる。
1年くらいでね。
そこに存在はしている。
だが、なぜか誰からも
見えなくなってしまう。
そのうち声も聞こえないし、
触られても感じない。


え…


テオくんが死ぬことはない。でも…
テオくんの姿は見えない…。


呆然としながらもテオくんと病院を出た。
じん
大丈夫。テオくんひとりじゃないよ
じん
それに、テオくんが世界から消えても
俺の世界からは消えないから。
テオ
そうだね。がんばろう
__________________
俺達はまず、日常の些細なことでも記録する。
サブちゃんをいっぱい撮って、
テオくんのいる姿を全部をたくさん残す。
食べる姿、歯を磨く姿、、、

見飽きたようなものなのに改めて見ると
新鮮で、愛おしかった。


最初は恥ずかしがっていたテオくんも
次第に慣れ、
そのうちふざけて俺を撮ることも増えた。
テオ
俺がこんなにじんたん好きだなんて
気付かなかったな

そういいながら編集をする俺を撮るテオくんに向かって笑いながら
じん
俺は自分がテオくん好きだって
気付いてたよ。


ここはカット。

しかし、そんな穏やかな日々を、
病魔はゆっくりと、
だが着実に蝕んでいった。
__________________
初夏の日差し爽やかな、ある日曜日

いつも通り撮影をして片付けをしていたら
いつの間にかテオくんの姿が消えていた。
じん
あれ、さっきまでいたのに

コンビニ行ったのかな


きっとすぐ帰ってくるかー









______3時間たった。
じん
え、なんで
不安になってテオくんに電話した。
その着信音はリビングで聞こえた。
すぐ近くで


そして俺はそこで初めて、
リビングのソファーに座って
スマホを握りしめて泣いている
テオくんを見つけた。



テオくんはずっとそこにいたんだ。


ただ…俺に見えなかっただけで。
じん
テオくん…ごめん。
テオ
じんたんは悪くないよ

こんなことがだんだん増えた。
長いときは丸3日も透明なまま。

そのうち、ルールができた。

テオくんの姿を見かけないと思ったら、
すぐに電話をかけること。
透明になってると気づいたら、
すぐにメモに書いて貼る。
透明な間は家から出ない。




慣れとは恐ろしいもので、半年が経てば
テオくんが透明になっても動揺しなくなった。
もちろん悲しいが、
テオくんが一番悲しいはず。





透明な間は誰にも認知してもらえない。

その絶望は到底俺には計り知れない…
_______________




1年たった。

テオくんはまだ完全に消えていない。
だが、もうほとんど俺にテオくんの姿を見ることはできない。



最後に見たのはいつだっけ?


目安と言われていた1年は超えた。
いつ消えてもおかしくない。




あの手の温もりが、



「じんたん」と呼ぶ声が、



あの笑顔が、



俺の愛するテオくんのすべてが
この世から消えてしまうことが、


たまらなく悲しくて怖い。







テオ
大丈夫?病院行かないとだね、
じん
そっか、1年たったからね
テオ
泣かないで…
じん
大丈夫。
___病院についた。
しばらく、この一年のことなどを話した後、
お医者さん
寺島にだけ話を聞きたいから
別室で待っててほしい。

と言われた。



え、テオくん今透明なのに?
なんか特殊な意思伝達方法なんかあるのかな…



診察室のドアが閉まる瞬間、
俺を見ていたお医者さんの目が
悲しそうに歪んだことがやけにはっきりと
俺の目に焼き付いた。

プリ小説オーディオドラマ