第21話

中毒③
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2018/07/09 18:49
テオ目線
テオ
ただいま
じん
おかえり!またフレント?
テオ
うん、まあね…
いつもと変わらない出迎え。
じん
ねえ、今日はなんの日かわかる?


え、まさか、、バレた?
じん
もう!やっぱり忘れてる。
今日はテオくんの誕生日!でしょ?


え、
俺はこんな日になんて約束をしてしまったんだ…


じん
今日はね?お祝いだから頑張ってご飯作ったの!ケーキもね、焼いたの。いっしょ食べよ?
テオ
あ……うん!ありがとう


じんたんの、少女みたいな笑顔。


それを壊さないようにと、元気を装って答える
じん
さ、着替えたら座って座って!



テーブルにはごちそうがいっぱいだ。
テオ
お!おいしそう。
トマトのスープもある!
毒を入れるなら、これだろうな。
そう思って座った。
じん
ねぇ、携帯なってるよ?
携帯をとると、
あの女からのメール
"彼のスープにアレを入れたわ。
今から二人で食べるところ"


俺も……しなければならないのか…


今、じんたんは飲み物を取りに行っている。



……今しかない……もうやるしかないんだ。




俺はじんたんのスープに毒を入れた。
じん
お待たせ!乾杯しよ!
二人でグラスを持つ
じん
お誕生日おめでとう!
テオ
ありがとう
最後の晩餐が始まった。
じん
ねえ、食べて食べて
早く恐ろしいことを終わらせたくてトマトのスープを勢いよく飲んだ。














……その時だった。
じん
おいしい?
おいしい?
え……
じん
ねえ、おいしい?
ねえ、おいしい?



じんたんの声が、じんたんの声なのに……



あの女の声に聞こえる
言ったでしょ?今日やるって。
ちゃんとわかるように、全部言ってあげたじゃないの。そこについてる、最低なことばかり考えてる頭で、思い出して?



"浮気してるくせに品行方正を求める男"


"腕によりをかけた、最後の晩餐"


"一緒に食べる……毒入りスープ"





あ、家を教えられないはずだ、
女の家はここなんだから。
そして、殺したい男は……俺だ。
じゃあ……このスープは?



やばい、体が思ったように動かない……
じん
テオくんが俺に退屈してるってわかった時、すごくショックだったの。
テオくんの目が女の人のほうにむかっていることもわかってた。

だからテオくんの "女の好み" になろうって思って!そしたら、よかった!
面白かった!世界が違うの!


そこまで言うと、俺を膝枕するように寝かせた。
じん
そんなとき、おもったんだ。

もう今の "じんたん" を愛してくれないテオくん。だから、俺が "女" になって
じん
浮気相手になったの。
テオ
あ……あ……
謝ろうと声を出してみるが、言葉にならず、涙ばかりが流れていく。
じん
いいよ、謝らなくて。
謝ったくらいでどうにかなると思う?
"じんたん"に飽きて本人ってことも気づかないばかりか、たまった愚痴をぶつけて…
じん
挙げ句の果てに殺そうとするなんてね。




それは、おまえが言い出したじゃないか。

……だめだ。無理。



俺を見るじんたんが悲しい顔をしてるのに





怖い
じん
ねえ、死ぬほど驚いた?





……俺は落ちるようにねむった。

ただの粉一つまみと、じんたんへの恐怖で





そう、偽薬効果……




それが薬だと思い込むことで治療効果を期待できる………





なんてことがあるんだって




じんたんがそう教えてくれた。
スープを飲みながら、






俺が、あの粉を入れたスープをだ。
じん
おいしい










_______________
あれから5年。
俺達はリスナーからも応援されるようになった仲のいいカップルだ。


特に俺が夢中でね、じんたんから離れられないんだ。







だってじんたんは……
言葉一つで、俺をどうにでもしてくれるんだから。





















❃解説
じんたんは "あの女" だった。以上!

ここまで読んで見返してみるのも面白いかもしれないよ!←誰
byさきいか

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