第44話

2,670
2021/01/21 03:42
ご飯を食べていると紺炉がふと呟いた


紺炉「そういやまさか息子じゃなくて娘だったとはな」

『それはごめんなさい』

紺炉「驚きはしたが怒りはしねェ、だがわかってりゃ刀じゃなくてかんざしだとか帯だとかにしたんだがな…」

『何の話?』

紺炉「そろそろ誕生日だろ?それに入隊祝いも兼ねて渡そうと思ってたモンがあるんだが、女じゃ刀なんて貰っても嬉しくねェだろ」


たしかにもうすぐ16歳になる、そして覚えていてくれたことに嬉しくなった


『家族とか友達とか好きな人に貰えるなら何でも嬉しいし私的には刀の方が嬉しいな』

紺炉「気ぃ使わなくていいんだぞ」

『実際の性別が違ったとしても私は私だし、それに茶屋の娘とかじゃなくて火消しなんだよ?実用性があっていいじゃん』

紺炉「うちの娘は変わってるな」

紅丸「たしかに大の男を組み伏せるようなこいつには刀の方が似合ってるかもしれねェ」

『紅丸は人のことをゴリラみたいに言わないで欲しいな…』

紺炉「それなら宴会が終わったら渡す」

『ありがとう、お父さん』

隊員「紺さん、可愛い娘さんが出来てよかったッスね!」

紺炉「ああ」



ヒカヒナと遊んだり久しぶりに一緒にお風呂に入ったりご飯を食べたり紅丸が愉快王になるのを見たり、そうこうしているうちにそろそろ眠くなってきた


『そろそろ寝ようと思うんだけど』

紺炉「俺もそろそろ寝ようと思ってるから丁度いい、刀受け取って行け」

『わかった』


大広間を出て紺炉の部屋に向かう

そして袋に入れて仕舞ってあった刀を渡された


『見ていい?』

紺炉「構わねェ」


袋から出すと最初に黒い柄が見えた
そして次は一部青い飛沫の模様が入り、青い飾り紐の付いた黒い鞘が出てきた

刀を抜いて刀身を見るとキレイに光っている


『とてもキレイだね、ありがとう!』

紺炉「気に入ったならよかった」

『そういえば紺炉さんは何色が好きなんだっけ』

紺炉「黒と赤だが」

『紅丸は自分が好きな黒と青の羽織渡してきたけど紺炉さんはどうしてこの色選んだの?私はこの色好きだけど』

紺炉「あなたの髪と目の色と同じだったもんでな」

『なるほど…さすがお父さん、刀は使わなきゃ意味ないから使うけど壊さないように大事に使うね』

紺炉「ああ、そうしてくれ」

『前の紺炉さんのお下がりの鍔なしの刀とは使い方変わるし、また時間のあるときに発火能力無しで剣術の稽古つけてよ』

紺炉「それならとりあえず日課の素振りを一緒にやるか?」

『うん、明日からやる』

紺炉「それなら朝起こしに行ってやるから一緒に朝飯食ったら稽古するか」

『ありがと』

紺炉「そろそろ寝んだろ?」

『うん、でも…』


長らくここには帰れてなかったせいで寂しく感じる


紺炉「どうした?部屋は定期的に掃除してあるし布団も洗濯しておいたから問題ねェぞ」

『久しぶりに帰ってきたから一日が終わるのがちょっと寂しいのかな…それに出ていく前はヒカヒナか紺炉さんか紅丸と夜一緒に寝たり昼寝したりしてたなって思って懐かしくて』

紺炉「これからは毎日会える、それに明日の朝ちゃんと起こしに行ってやるから安心して寝ろ」

『一緒に寝ちゃだめかな』


最初の頃こそ遠慮や距離があったが、今じゃ前世の記憶やらなんやら関係無しに父親のように思っている


紺炉「年頃の娘が男の部屋で…しかも一緒の布団なんかで寝るモンじゃねェ…」

『紺炉さんはお父さんみたいなものだし』

紺炉「たしかにそうだがもう16なんだ、少しは危機感を持ってくれ…」

『だめ?お父さん…』

紺炉「仕方ねェ…だが他の奴らにそういうことは要求すんなよ?」

『わかってるよ』

紺炉「とりあえず寝支度してこい」

『うん、寝支度して枕だけ持ってくる』


部屋に戻り、刀を置いて歯磨きと着替えを済ませて枕を持って再び紺炉の部屋に行く

廊下を歩いていると騒がしい声が聞こえてくるのでまだ宴会は終わってないらしい

紅丸もまだ愉快王になってるはずだ


『寝支度して戻ってきたよ』

紺炉「ああ…ってその格好で寝るつもりか?」


まだ暑いので私の格好は半袖に裾のゆったりした足がほぼ丸出しの短パンだ


『そうだけど、どうかした?』

紺炉「皇国じゃそういうのが普通なのか?」

『まぁそうだね』

紺炉「あまり煩く言うつもりはねェが、まともに服を着てくれ…」

『暑いじゃん』

紺炉「それなら心配だからせめてその格好で部屋の外を歩き回るのは避けてくれ」

『善処はする、それより早く寝ようよ』


そう言いながら敷いてある布団まで行き、手に持っていた自分の枕を置く


紺炉「誰に似て話を聞かなくなっちまったんだ…」

『紅丸かな?』


そのまま我が物顔で布団に転がる


紺炉「うちの娘の将来が心配でならねェ…」

『いいからいいから、もう眠いからお説教とかは明日で…』

紺炉「はぁ…」


ため息をつきながら紺炉も布団に入る


『おやすみ、お父さん』

紺炉「ああ、おやすみ」


昔のように頭を撫でてくれる


すぐに意識が落ちた

プリ小説オーディオドラマ