喧嘩が始まりそうな勢いだったので仕方がない
予定外だが
重たい身体を引きずって立ち上がり、物陰から出る
『勝手に殺さないで欲しいな…』
紅丸「あなたの本名に似た男装用の偽名!」
紺炉「無事だったのか!?」
『発火限界でふらふらだけど無事…』
紺炉「何であそこで割って入った!」
(やば…珍しく紺炉さん激おこだわ…)
『あそこで割って入らなきゃその炭化…今の3倍にはなってるところだよ、それに勝算があったからやったんだよ』
紺炉「だが死ぬかもしれなかったんだぞ!」
『だから最後の最後で紅月だけ代わりに…』
紺炉「俺のことなんて構わねェ!」
紅丸「あなたの本名に似た男装用の偽名は勿論だが紺炉も人のこと言えねェだろ!何で俺にもやらせなかった…」
紺炉「紅をよォ…こんなとこで失うわけにはいかねェんだ」
『着いたときにはもう瓦礫の下だったし…起こしたところで間に合わないだろうし発火限界じゃ意味ないと思って…』
紅丸「馬鹿野郎!俺はこんなところじゃ潰れねェし…お前らが潰れてどうすんだよ!」
『いや…潰れてるの紺炉さんだけ…』
紅丸「お前も運が良かっただけで死にかけてんだろ!とくに紺炉…みんなお前がいるからついてきてんだぞ…紺炉がこんなになっちまったらこれから誰が浅草を仕切ってくんだよ!!」
紺炉が紅丸の胸ぐらに掴みかかった
紺炉「お前がやるんだよ!紅丸…」
『うんうん』
紺炉「あなたの本名に似た男装用の偽名も浅草に戻るつもりなら他人事じゃねェぞ」
(あれ?他人事ではない?)
紅丸「そういやお前…髪はどうした」
『うーん、切った…?』
ウィッグを被ってるだけなので冗談だが
紅丸「去年の誕生日の時に今の倍まで伸びたら戻るって言ってたじゃねェか…まさかまだ戻らないつもりで切ったのか?」
紺炉「紅…!お前会ってたのか?」
『去年の紅丸の誕生日の時にプレゼントだけ置いとこうと思って窓から部屋に忍び込んだら何故か居て…』
紺炉「紅…何で言わなかった」
紅丸「べつにいいだろ、それよりまだ戻らねェつもりなのか」
『今から一旦帰るつもり、復旧は手伝うけど町がこんなんじゃ泊まる場所も足りないだろうし…元々浅草の近くに泊まってたから暫くはそこから毎日通うよ』
紅丸「そう言って戻ってこねェつもりじゃねェだろうな…」
『刀だけ持って飛び出してきたから着替えもないんだよ…見てよこの背中、発火能力のせいで服燃えて背中ほぼ丸出しだし…ところどころ焦げて破けてて斬新なデザインになっちゃってるじゃん』
紺炉「…早く着替えてこい」
紅丸「ああ、着替えたら戻ってこいよ」
さすがの浅草でもこのパンクを通り越してただボロボロって感じの訳のわからない破け方は粋とは言えないらしい
『着替えて食料とか必要なもの持って戻ってくるよ、そうだ…このクレーターなんだけど特殊消防隊が来たら紺炉さんがやったことにしておいてくれる?』
紺炉「何でだ」
『特殊消防隊にはまだ関心を持たれたくないんだ、実際に紺炉さんが放った紅月の分のクレーターもある訳だしあながち嘘じゃないからいいでしょ』
紺炉「わかった、鬼は俺が鎮魂したことにしておく」
『それとその肩…少しだけど炭化してるから発火能力は二度と使わないで、浅草が落ち着いてからでいいから気が進まないだろうけど皇国に行って薬も貰って』
紅丸「それには俺も賛成だ」
『浅草のことは紅丸がいるし、自分も手伝うから』
紺炉「わかった、浅草のことはお前らに任せるよ」
『じゃあ一旦戻るね、昼には戻るから』
一旦浅草を出て物資を調達しに行くことにした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。