第74話

好きなタイプ
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2021/01/31 03:04
詰所で初めて料理をしてから数日後


今日は見回りを早めに切り上げて帰りに材料を買い、書類仕事は紺炉に残りの見回りやら出動要請は紅丸に任せて夕飯を作ることにした


作るのは自分と紺炉と紅丸の3人分だ


仕事のみならそこまで疲れないが夕飯時にデザートとして甘さ控えめのパウンドケーキを焼こうとしたら見事に双子に捕まり、昼休み返上でさらに仕事の合間を縫って2度も…計4本のパウンドケーキを焼かされたのである

双子はケーキを1本ずつ食べてさらに次のを焼いている途中で紺炉に見つかって怒られて退場していった

そんなこともあり夕飯は3人分なのだ



何を作るか色々考えた結果、無難に行こうと思いひき肉やら野菜やらを買って詰所に帰り料理を始める


わざわざご飯を残して置いてもらうのもなんなので米だけ貰って自分の部屋で炊飯器でご飯を炊いている、部屋に家電が増えた

部屋の炊飯器にといだ米をセットして台所へ向かう

今日の夕飯はハンバーグとサラダとコンポタと白米だ


詰所に戻って1時間ほどしてそろそろ完成というところで紅丸と紺炉がやって来た


紅丸「腹減った」

紺炉「本当に作れたんだな…」

『もうできるから運ぶのは手伝って、ご飯は私の部屋で炊いてるから私の部屋で食べよう』

紅丸「わかった」

紺炉「他に手伝うことあるか?」

『何か飲み物とか欲しければ各自で用意しといて』


そうこうしているうちに出来上がり、盛り付ける

面倒なのでデザートのパウンドケーキも切り分けて持っていくことにした


『よし、じゃあ行こうか』


そう言って各自お盆を持って私の部屋に行く、事前に大きめの座卓を持ち込んでおいた

さらに炊き上がったご飯をよそって完成である


『それじゃあ食べようか、今日はハンバーグとコンポタージュとサラダとパウンドケーキね』

紺炉「いただきます」

紅丸「いただきます」

『どうぞ』


各自好きなものから食べ出す


紺炉「美味いな」

紅丸「ああ」

『皇国の料理も口に合ったようで良かった』

紺炉「花嫁修業は要らなそうだな」

『今の時代、家事全般は女子力じゃなくて生活力だからね』

紺炉「じょしりょく…?」

『女としてのステータス…魅力?とかじゃなくて生きていく上で必要な生活力であって何一つ家事の出来ない人間は男女関係なくありえないって風潮もあるんだよね』

紺炉「若…」

紅丸「掃除くらいはできる…」

『浅草なら何も問題ないでしょ、たしか一歩下がってついてくる女性が好まれるんでしょ?それならむしろ私みたいな方が好まれないし』

紺炉「まあそうだが、あなたならそれでも平気だと思うぞ」

『たしかに最前線で戦うのがお仕事の私が一歩下がったら浅草の人は死んじゃうもんね』

紺炉「それもあるが…ちぃと違うな…」


紅丸が唐突に質問を投げかける


紅丸「あなたも家事とか出来るやつがいいのか?」

『そもそも誰かと付き合う気も結婚する気もないから関係ないよ』

紅丸「そうじゃなくたって好みはあるだろ」

『そうだな…最低条件は私より強いってことだな、それに私は忙しいし家事が出来る人かしなくても済むような状況じゃないと無理だね、あと顔が良ければ嬉しい』

紺炉「現実的だな…」

紅丸「自分より強い奴って自分の強さ自覚してんのか…?浅草じゃ俺か紺炉くらいしか勝てねェんだぞ…」

『たしかに、発火能力なくても強いし優しいし格好いいし家事できるし安心感あるしお父さんがはいいよね』


紅丸か紺炉という選択肢に内心焦った結果の答えだ


紅丸「まさか紺炉が好きなのか…」

紺炉「ありがてェが…若じゃなくてか…?」

『紺炉さんのことはお父さんとしてしか見てないよ?』

紅丸「俺のことも兄ちゃんとしてしか見てねェのに紺炉かよ…」

『私に誰とも付き合う気がないとは言え紅丸は好きなタイプのど真ん中だから洒落にならないでしょ』

紅丸「は…?」


紅丸(俺が好きなタイプ…?)


紺炉「おっ」


紺炉(進展があるのか?)


『あ…何でもない、それより2人はどんな人が好きなの?』


(やっべ…口滑った)


疑問、興味、不覚…という感じだ

すかさず話を逸らした


紅丸「面白れェ奴」

『漫才でも始めんのかよ、女の話だよ。まぁでも紅丸ってまさに一歩下がってついてくるタイプの女の人が好きそうだよね』

紅丸「…案外そうでもねェらしい」

『違うの?』

紅丸「そもそもそういう好みはよくわからねェが、好きな奴になら尻に敷かれるのも悪くねェ」

『新しい性癖の扉を開いてしまった…?』

紅丸「違ぇよ…それよりまだ紺炉の好みの話は聞いてねェだろ」

『そうだった』


何やらはぐらかされた気がするが自分も先程したので見逃そう


紺炉「あー…」

紅丸「紺炉は小股の切れ上がったいい女が好みらしいぞ」

紺炉「若…勝手にばらさないで下さい」

『何それ』

紅丸「足が細くて長い垢抜けた女が好きなんだとよ」

『お父さん実は助平?』

紅丸「ああ、こう見えて助平だ」

『むっつりか』

紺炉「やめてくれ…」

紅丸「あなたはピッタリだろ」

紺炉「いくら血が繋がってなくて小股が切れ上がってようが何だろうが大切な娘をそんな目で見るわけねェだろ…」

『そういう線がちゃんとしてるところはお父さんのいい所だよね』

紺炉「ありがとな…」

『まぁ何でも好みは人それぞれって感じだね』

紺炉「ところであなたは本当にこのままでいいのか?俺は若を1人前にしなきゃなんねェしもういい年だから今更って感じだが…あなたはまだまだ若いだろ?いつかは…」


心配らしい


『いつかね…そのいつかが来ればそういうのも有りかもしれないけど』

紅丸「いつなら有りなんだ」

『いつかわかるよ』

紺炉「話してくれねェのか」

『まだね』

紅丸「なァ…そもそもそのいつかが来ない可能性もあるみてェな言い方してねェか?」

『ははっ、さすが若は鋭いですね』


笑って誤魔化す


紅丸「何で…」

『見逃して欲しいな』

紅丸「…今は見逃してやる」

『ありがとう』


今はという言葉は引っかかるがとりあえず見逃してもらえるなら何でもいい


『久しぶりのパウンドケーキも美味しいなぁ』

紺炉「ったく…だがこの菓子はたしかに美味いな、ヒカゲとヒナタが独り占めしようとしてたのも頷ける」

紅丸「アイツらまた…」

『子供だからしょうがないよ』

紺炉「いつもすまねェな」

『気にしないで、それより食べ終わったし片そうか』

紺炉「ああ、ご馳走様でした」

紅丸「ごちそうさま」

『お粗末さまでした…って言うんだっけ?』

紅丸「何でもいいんじゃねェか?」

『紅丸らしいね』






隠し事も不安も何もなしに生きていきたい


でもそれはまだ…

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