第68話

事故
2,434
2021/01/27 17:06
謎の結論に呆れた声が返ってくる



紅丸「俺は七曜表じゃねェよ…」

『でかいのもあったのか…出来がいいな』


この酔っぱらい話を聞かない


湯船から立ち上がり紅丸の顔を覗き込む


『うわ、細かいな…ってかこれ横からも見えんじゃん3Dモデル?あっ、等身大フィギュアってやつか…ついに消防隊も変なものにまで手を出し始めたな』

紅丸「見んじゃねェ」

『でも何故全裸…もしかしてヌードカレンダーの人気からか…?筋肉なんかの再現も凄いな、灰島の技術か?』

紅丸「おい、聞いてんのか?」


全くもって聞いていない


紅丸(全裸のまま人の周りをグルグルと…人の気も知らねェで…)


次はペタペタと触りだした


『触り心地いいな、やっぱり夢か…私は実は寝たまま布団を触ってる感じなのか』

紅丸「テメェ…触んじゃねェよ」

『うんうん、紅丸ならそう言うよね、現実に忠実な夢だな』

紅丸「いい加減にしろよ…」

『は?股間まであるし…いやいや、私は見たことないしヌードカレンダーの延長で勝手に想像してしまってるのか…』

紅丸「おい!」

『暴れん坊な破壊王の若が暴れん坊将軍だわ…紺炉さん…あなたが大切に育ててきた若頭をこんな夢に出してしまってごめんなさい…親不孝な娘を許して…』

紅丸「七曜表でも夢でもなく本物だって言ってんだろ!」

『怒ったとこもそっくり、さすが私の記憶力…近くでよく見てるだけあるわ』

紅丸「自分が何をしてたのか思い出せ」


酒でIQの下がった頭は夢だと確信し何も聞いちゃいない


『いやほんと整った顔面…ラフルス何世なんてただのジジイだしこの顔面だけで浅草に新たな宗教開拓して聖陽教から信者ごっそり引き抜けるだろ…』

紅丸「顔面だけじゃねェがその顔面も込みで浅草で宗教開拓したのはお前ェだろ…」

『格好いいなぁ』

紅丸「頼むからせめて体を隠せ…」


紅丸(いつまで続くんだこの拷問は…)


自分のすぐ近くをウロウロしているので目線を上げて顔しか見ないようにはしているが最初に突然立ち上がった拍子に一瞬見てしまっていたのが頭から離れない


『それにしてもこんな夢みるなんてな…末期だな…これ以上見るのは現実にも影響しそうだし…』


そう呟いて背を向けて離れる


『それよりここどこだ…夢ってどこまで行けるんだろ…』


距離ができたせいで後ろ姿ではあれども全体が見えてしまっている少女に紅丸の中の何かがブチッと切れた


紅丸「散々丁寧に教えてやってんのに夢だ何だと気づかねェ方が悪ぃだろ」


そう言いつつ背を向けてぶつぶつと考え込んでいる少女に近づいて行く


そしてそのまま後ろから抱きしめるようにして退路を塞ぎ、薄い肩に噛み付く


『は?えっこわ、変なとこで寝返り打って何か踏んずけた!?』

紅丸「いい加減に気づけよ、この酔っ払い…」


イラッとして次は細い首筋に先程より強く噛み付く


『いっ…た、何…!?』

紅丸「クソっ…」


他に幾らでもやりようがあるのに意識をはっきりさせる為であると自分に言い訳をして白くて柔らかい噛み心地のいい首筋に何度でも噛みつきたくなる

しかしくっきりと付いた2つの歯型を見てこれ以上痛くはさせたくないという謎の良心と葛藤した結果、じゅうっと音を立てて首筋に吸い付き跡を付ける

もはや趣旨がズレている


『ちょっ…やめっ…』

紅丸「夢なんだろ」

『これが夢なら全ては私の煩悩…このままじゃ紅丸にもお父さんにも申し訳が立たない…かくなる上は…!』


発火能力で身体能力を上げて腕から抜け出し紅丸に向き直る


(殴るか蹴るか沈めるか…いや、夢でもそういう風に紅丸を傷付けるのは嫌だ…まさに目には目を歯には歯をだ)


『覚えてたら紅丸に謝るから…!いい加減にしろ!私の煩悩!』


そのまま驚いた顔をした紅丸の肩を掴んで首に噛み付く


紅丸「…!?」


目の前の紅丸に攻撃したからでも何でもなく、ただ単に発火能力を使ったせいで元々大量に飲んだ酒と長風呂のせいで上がっていた体温が更に上がって目の前がブラックアウトする


『よし…』


これでやっと夢が終わると意識を手放した


予想外の出来事に呆然としていたが自分の首に噛み付いた少女が崩れ落ちていき、我に返って抱きとめる


紅丸「おい…気絶したのか…?」


頭を抱える

力尽きたあなたの首や肩には2つの噛み跡と数個の赤い跡が残ってる


紅丸(まずい…紺炉に見られたら…)


とりあえずあなたを横抱きにして壁に掛かっているシャワーの下に行って足で蛇口を捻ってお湯を出し、軽く体を流してやってから浴室から出ていく

せめてもの気遣いだ、それに気絶している相手に手を出すほど倫理観の欠如はしていない


片手で担ぐようにあなたを抱え直して脱衣所のカゴを漁ってタオルやら着替えやらを取り出す


壁に寄りかからせるようにして座らせたあなたの体を拭き、着替えさせる

着替えさせるにあたって全て見えてしまい理性が揺らぐが紺炉の鬼のような形相を想像して押しとどめる


紅丸(なんでこうなった…)


自分も着替え、残りの荷物と一緒にあなたを抱えて部屋に連れていく


とりあえず自分の部屋の布団を足で広げてそこに寝かせた

そして隣の部屋に布団を敷いてから移動させて何事もなかったかのように装ったが傷までは隠せない


紅丸(今包帯で隠したって朝起きていきなり首に包帯が巻かれてりゃ不思議に思って確かめられちまう…明日どうにかするか…)


紅丸が自室に戻っていく





何だかんだでしっかり目に焼き付けてはいたらしく暫くは一人で楽しんだとか

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