第61話

泥仕合
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2021/01/25 18:25
紅丸が部屋から出ていき一安心する



『お父さんありがとう』

紺炉「着物が肌蹴てんじゃねェか…直しておけ」


一応焔ビトの鎮魂後に肌蹴た着物は軽くなおしたが先程玄関で急いで靴を脱いだ時にまた肌蹴たみたいだ

着物を直してお面をとる


『そうだ、着物ありがとう』

紺炉「ああ、よく似合ってる」

『あまりにも私が服とかに無頓着なせいで心配かけちゃったみたいでごめんね、今度これ着て一緒に出かけようよ』

紺炉「そうだな、まだ若いし浅草のことなら俺や紅もいるんだからたまには息抜きしてくれ」

『そうするよ』

紺炉「それにしてもさっきは何があったんだ?」

『呉服屋からの帰りに焔ビトが出て近かったし刀あったから鎮魂しに行ったんだけどみんな私だって気付かなくてさ…紅丸が不審者だと思ったのかずっと着いてきて…』

紺炉「お面取りゃ良かったんじゃ…」

『なんか気まずくてさ、団子食べながら紅丸が先帰るの待とうとしたけど何故か隣に座って団子食べだすし…私が先に行こうとしたら残りの団子を口に詰め込んで自分も席を立とうとするし…なんか気まずさに耐えきれなくて逃げ込んできたってわけ』

紺炉「そりゃ災難だったな…?」

『まぁいいや、宴会までここで匿って』

紺炉「せっかく着飾ってんのに閉じこもって茶勿体ねェだろ」

『それもそうか、うーん…』





〜紅丸side〜


紅丸(あの紺炉が詰所に女を連れ込むとは珍しい事もあんだな、そういや…)


ふと先程の光景を思い出す


紅丸(着物がはだけてたが左の太ももに傷跡があったな…なんか見たことあんだよな)


一体どこで見たことがあるのか思い出そうとする


紅丸(そういやあなたは拾われた時に左足を怪我してたんだったか…左足の太ももに穴が…)


1つの可能性を考えたがいやまさかそんな訳がないと振り払う

しかし、いつも焔ビトが出現すればすぐにでも駆けつけるあなたの姿がなく他の隊員に聞いたところ朝食後に仕事を頼まれて詰所から出ていったと聞いたのを思い出した


紅丸(まさかっ…)


急いであなたの部屋に行くがやはり戻ってきていない

そして先程の、紺炉の女かと聞いたところそうとも言えるという答えとはだけた着物を思い出して再び紺炉の部屋に戻る






『そうだな、とりあえず団子買ってきたからヒカヒナ呼んで縁側でお茶でもする?』

紺炉「ああ」


…と、話しているとスパン!といい音を立てて勢いよく襖が開けられた


『あ…』

紅丸「紺炉!」

紺炉「は…?」


紅丸が部屋に入ってきたと思ったら紺炉に突然掴みかかる、困惑だ


紅丸「あなたがテメェの女だとは聞いてねェぞ」

紺炉「俺の女だとは言ってねェよ…」

紅丸「否定しなかっただろ、それにこれからお楽しみだったらしいじゃねェか」

紺炉「娘だから捉え方によってはそうとも言えると言っただけです」

『ちなみに着物は玄関で急いで靴脱ぐときにはだけただけだからね、どちらかと言うとずっと着いてきてた紅丸のせいだから』

紅丸「は…?」


次は紅丸が困惑である


紺炉「だから言ったじゃないですか、そういう訳じゃないと」

紅丸「それなら何で顔を隠して…」

『みんな私だって気付いてなかったからなんかそこで実は私でしたーとかなんか恥ずかしいじゃん』

紅丸「それだけか…?」

『それだけ』

紺炉「すぐ熱くなるのは若の悪い癖ですよ」

紅丸「うるせェ」

『そうだ、誕生日おめでとう』

紅丸「ああ…」

紺炉「わざわざ若の誕生日に着飾らせたんですよ、何も無いんですかい」

紅丸「綺麗なんじゃねェか?」

『ひねくれてるなぁ、綺麗でしょ?』

紅丸「ああ、綺麗だ」

『それはそれで…』


素直に言われると気恥しい


紅丸「そういや着替えんのに朝から出かけてたのか」

『そうそう、何故か私指名で出動要請があって行ってみたらあれよあれよという間に服を脱げこれを着ろと勢いに流されて気付いたらこの格好で…私を着飾らせてくれっていう紺炉さんからの依頼でしたって訳』

紅丸「それじゃその着物なんかは紺炉が選んだのか」

紺炉「ああ、こうでもしなきゃうちの姫さんは年頃の娘らしいことの1つもしねェからな…ちょいと強引だが呉服屋の婆さんに頼んでな」

紅丸「いい趣味してんじゃねェか、花街の姉ェちゃんより目立ってたぞ」


(うん、それは自分でも思った…)


紺炉「うちの娘をそんなモンと比べんじゃねェよ、浅草一の美人だぞ」

『へへっ…お父さんは嬉しいこと言うね』

紅丸「親バカかよ…まぁそれは認めるが」

『ってか花街の姉ェちゃんに見えたわけ?』


突っかかってみる


紅丸「いや…」

『ふーん、もしかして花街の姉ェちゃんならついていって買おうと?』

紅丸「そういうわけじゃ…」

『紅丸もそういうところで遊んでるんだね』

紅丸「ちょっと待て…」

紺炉「浅草の破壊王が尻に敷かれて形無しだな、まぁ相手が神じゃ仕方ねェか」

紅丸「うるせェぞ紺炉、そもそも何で花街の姉ェちゃんがどんなモンか知ってんだ」

『花街の姉ェちゃんに女でも気にしないから付き合ってくれとか…断ってもどこの店の何番人気だけどタダでいいから抱いてくれとかたまに声掛けられるから…』


最近じゃ慣れつつあるが自分でも驚きである



『まぁとにかく遊んでる人は好きじゃないな』

紅丸「俺は遊んでねェ、むしろ遊んでるのは紺炉の方だ」

紺炉「そりゃ随分前の話だ、聞かん坊の世話が忙しすぎて10年は遊んでねェよ…とんだとばっちりだな」

『お父さん今も格好いいけど昔はもっとモテてそう…なんかあれだよね、初恋泥棒って感じ』

紺炉「流れ弾が来ちまったじゃねェか…」

紅丸「ああ、あなた程じゃねェが無自覚で事ある毎に女を落としてやがったな」

『紅丸がそれを言うか』


泥仕合である


紅丸「俺はつまみ食いはしねェ」

『いや、私もしてないから…』

紅丸「紺炉の話だ」

紺炉「かなり昔の話だ、若は童貞だ安心しろ」


大人しく攻撃を受けていた紺炉から紅丸への言葉の右ストレートが入った

紺炉のお墨付きとあれば信用できるがなんだか意外である


紅丸「テメェ…!」

『童貞ならぬ童帝か』

紺炉「どういう意味だ…」

『何時でも女を抱けるのに敢えてそうしないタイプの童貞』

紺炉「うちの娘はどこでそんな知識を仕入れて来るんだ…」


紺炉が頭を抱えている


紅丸「好きでもねェ女に興味はねェんだよ」

『顔が良くて余裕があるからこそ言える言葉だからその顔面に感謝した方がいいよ』

紺炉「若、言葉が足りてないですよ」

『まぁその言葉を信じて私の事を花街の姉ェちゃんと思った可能性は無かったことにしましょう』

紺炉「よかったですね」

紅丸「最初からそんなこと言ってねェ…」

『しょっちゅう勘違いしてる紅丸に仕返しだよ』



割と何事もやられる側は迷惑だがやる側は気分が良かったりするって感じだ

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