拘束した焔ビトを連れてネザーを出た
服のフードとマスクで顔を隠して出来る限り人の通らない路地を使って事前に調べておいた一番近い灰島の研究所を裏口から尋ねる
だいたいどこに持って行っても食品工場とかじゃない灰島の直轄なら1人くらいは話の通じる人間がいるだろうという訳だ
裏口のインターホンを押す
「何か御用でしょうか」
『売りたい物がある、実験材料だ』
「少々お待ちを」
数分待っていると裏口が開いた
研究員「お待たせしました…って子供か…?」
『年齢は重要じゃないだろ?』
研究員「一体何の用で…」
『これを売りたいけどここじゃ無理だから中に入らせてもらう、ちなみにこの鎖は一般人が触れば燃えるから触らないで…耐熱性のある場所に連れて行って』
後ろの浮いてるものを指さして答える
研究員「いいでしょう」
研究所の中のいくつかある建物の内の1つに入る
研究員「それで、実験材料とは」
『これ、ほぼ無傷の五体満足な焔ビトが1体』
鎖の一部を解いて中身を見せる
研究員「これは…上を呼んでくるので待っていてください」
数分すると慌ただしい足音が聞こえてくる
研究員「焔ビトを売りたいと言うのは君ですか?」
『そうだけど』
研究員「その鎖で捕まえたのか」
『そう、発火能力…それより取り引き』
研究員「要求は…」
『資金、それと私の個人情報や焔ビトの出どころについて一切詮索しないこと…継続した取り引きを望む場合はまた焔ビトを捕獲した時に他の施設でも取り引きが出来るようにするか焔ビトを輸送する手段がないなら他の施設まで私を迎えに来ること、明らかな欠損等が無いのに金額を下げようとしないこと、そして納期は無しで取り引きは私の都合で連絡無しに終了する可能性もある事を十分に了承して取引終了後も私について詮索しないこと』
研究員「わかった」
『私や焔ビトの出どころを探った場合はこの研究所も関わった人間も消す、不当な値下げに関しては取り引き終了で持ち込んだ焔ビトは処分する』
研究員「ひと1人の個人情報よりも完璧な実験材料の方が価値があるのでそんな真似はしません、ですが一つだけ…この焔ビトから足がつく可能性は?」
『それは絶対にない、この焔ビトも今後持ち込む予定の焔ビトも』
研究員「わかりました、では取り引き成立ということで正式に査定額や契約書も出しましょう、サインは要りません」
『他の施設に持ち込む場合はどうすればいい』
研究員「その鎖を目印にしましょう」
『わかった』
その後、焔ビトを拘束出来る場所に移してお金を貰って施設を出た
白装束の拠点を潰すついでに白装束には焔ビトになってもらって資金源になってもらうことにした
(もう夜か…汚い金でも金は金、美味しいご飯食べてまともな所に泊まって足りないものを買い足そう)
まずは夕飯
…ということで人通りの多い場所に出る
久しぶりの皇国、そして戸籍上で死亡扱いになってから初めての皇国での人間らしい生活だ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。