第43話

危機感
2,822
2021/01/20 21:00
戻るぞと言われて部屋を出ようとしたが何故か腕を掴まれてしまい進めないでいる


『え?何?』

紅丸「その格好で行くつもりか」

『暑いし丁度いいかなって思ったんだけど』

紅丸「危機感までねェのかよ…」

『危機感?戻ったらみんな騒いでてアッツアツの湯呑みが飛んできて頭から被って火傷する危険とか?』

紅丸「違ェよ…発想が独特過ぎんだろ…」

『他にこの格好じゃマズイ理由があんの?』

紅丸「こういう事だ」


掴まれていた腕をいきなり後ろに引かれ、体勢が崩れて畳に倒れる

紅丸がご丁寧に頭の後ろに手を回してくれたおかげか痛くは無かったが紅丸に覆い被さられているような状態であり訳が分からない


紅丸「これで少しはわかったか」

『キレイな顔が目の前にあるのはわかるけど、それとこれとの関係はないと思う』

紅丸「キレイな顔ってこの状況でよくそんな呑気なこと言えンな」

『稽古の時も私をボコボコにした事ないし今も頭打たないようにしてくれてるし…紅丸が危害を加えることはないって知ってるから』


(危害を加えられることは無いけどこの顔面は中々に心臓に悪いな…)


『あっ、たしかにこのまま取っ組み合いになって負けて押さえつけられたりしたら畳に擦れて痛そう』

紅丸「何でお前の頭ん中は常に物騒な想定してんだよ…」

『常に危険と隣り合わせの生活だったから?』


生憎、私の思考回路は長年の逃亡生活のおかげで乙女とは程遠い上にあの紅丸が床ドンするとは考えられない

ついでに紅丸の整った顔面が近すぎて怖い、顔面偏差値で圧倒的なマウントを取られている気分だ


(眼福だけどなんかキレイなものって取り込まれそうで見すぎちゃいけないような気がするし、早くこの顔面偏差値の暴力終わらないかな…)


紅丸「はぁ…そういう危険じゃねェよ…」

『じゃあ一体どういう危険だって言うわけ?』

紅丸「………」


考え込むように黙ってる


(不機嫌そうな顔でもやっぱりイケメンはイケメンだな)


そんな事を考えていると両方とも床についていた紅丸の腕が片方だけ移動し、趣に軽く首から耳までの筋を撫でられた


『ひぅ…って何すんじゃボケ!』


突然のあまりの擽ったさに変な声が出て恥ずかしさから発火能力まで使って紅丸を床に組み伏せてしまった


紅丸「何しやがる…」


さっきとは立場が逆でその上、紅丸の整った顔は見事に畳に押し付けられている

紺炉仕込みの体術+身体強化だ…


『いや…紅丸が変なことするから驚いて…』

紅丸「とりあえず上から退け」

『あっ、ごめん』

紅丸「また同じことされたくなきゃまともに服着ろ」

『わかった、顔大丈夫?』

紅丸「いてェ…発火能力まで使いやがっただろ」


そう、手加減はしたものの紅丸の顔面には見事に畳の跡が付いているのである

(やべぇ、気付かれる前に逃げよ)


『先行ってるね』

紅丸「俺も戻る」


(仕方ない、紺炉さんのところに逃げよう)



羽織を手に持って部屋から出て大広間に戻ると宴会はもう始まっていた


『紺炉さん、ただいま』

紺炉「紅に変なことされてねェか?」

『うーん…』


紺炉が後ろの紅丸に気付いた


紺炉「テメェ…手は出すなって言っただろ…」

紅丸「あ?」

紺炉「顔に畳の跡が付いてんぞ、何してやがった」

紅丸「跡まで付いてんのかよ…俺の方が被害者だろ」

『紅丸が変なことするからちょっとびっくりして組み伏せてしまいまして…』

紺炉「紅は自業自得だ、あなたも何かありゃ思い切りやってくれて構わねェ」

紅丸「俺はそんなクソ野郎じゃねェよ…」

『うん、紅丸は嫌がることはしないし、お父さんの娘は逞しいから安心して』

紺炉「それは知ってるが…それでも気を付けろよ」


立ち話もそこらに自分たちも座ってご飯を食べることにした

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