第92話

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2021/02/07 02:00
紅丸が出ていった襖を見ながら呟く


『治ったのに嬉しくないのかな?』

紺炉「心底心配してた分、呆気なく治って気が抜けたんだろ」

森羅「ところでさっき弟って言ってませんでした?」

『言ったよ、やっぱりあなたの名字中隊長じゃなくて姉さんって呼んで欲しいな』

森羅「どうして…」

『間接的には私の弟だから』

森羅「どういうことですか?」

『それはまた後でね、まだ事は済んでないから私たちも出るよ』

紺炉「まだ何かあんのか?」

『まだ始まったばかりだよ…ここからが踏ん張りどころなんだから、ほら第8の皆さんも』


立ち上がって刀を持って部屋から出て行く

詰所を出ると至るところで言い争いをしているのが目に入った


紺炉「やけに騒がしいな…なんか揉め事か?」

ヒナタ「テメェー!!なんなんだそのツラはよォ!!」

ヒカゲ「テメェこそなんなんだ!!」

ヒカヒナ「クソがァアアア!!」


ヒカヒナが争っている…一見するとそのように見える


森羅「オイやめろって…喧嘩か!?」

紺炉「ヒカとヒナが喧嘩たぁ珍しいな…」

ヒナタ「あん!?ヒカじゃねェ!!ヒカじゃねェだれかだ!!」

ヒカゲ「ヒナじゃねェ!!ヒナじゃねェだれかだ!!」

アーサー「げ…」


ヒカヒナが言い争うのを見て皆が困惑する中でアーサーだけ引きつった顔をしている

そしておもむろにアーサーがヒカゲの顔面に蹴りを入れた


ヒナタ「お ♪ 」

偽ヒカゲ「ぐべェ!」


偽ヒカゲが民家の壁に叩きつけられる


アーサー「気持ち悪ィんだよ!!」


アーサーが追撃をかます


森羅「お前!!子供になんてことするんだ!!」

桜備「お前はいいバカだと思ってたのに!!」

マキ「悪いバカだったんですね!!」

アーサー「よく見ろ!!ヒナタの言う通りだぞ!こいつのどこがヒカゲに見える!!どう見たって女装してる小さいおっさんだろ!!」

『アーサーが正解だよ、さっきの桜備大隊長と同じ』

全員「あ…」

紺炉「あいつだけじゃないのか?」

『今町が騒がしいのもそのせい、偽物と本物が入り乱れて喧嘩が始まってる、ほら…ヒカゲの顔が元に戻った』

森羅「本当だ…」

紺炉「こいつ自身が顔を変えられる能力を持っていたのか…それとも他に顔を変えられる人間が…?」

『白装束側の第3世代能力者だよ、前線に出てこないしそいつを倒したところで偽物の顔が一斉に戻る保証はない…だからそいつを追うのは得策じゃない』

紺炉「それならどうする」

『これからどこかで焔ビトが複数出現するはず、まずは…』


町の至るところで火の手が上がる


森羅「火事!?」

『白装束が動き出した、狙いは2年前と同様に浅草で鬼を生み出すこと、そして混乱に乗じて第8を討つこと…あとは私も狙いに入ってるかも』

桜備「気になることは多いですが…とりあえず我々はどうすればいいですか」

『町民の救助と避難誘導を、その過程で必要に応じて鎮魂も行って構いません、そして紅丸を見つけ次第ヤグラへ来るように伝言を』


指示を出していると第8の背後から近づいてくる発光体が見えた


『第8!今すぐ私の後ろに移動して!!』


着弾地点から皆を移動させる、そして次の瞬間に何かが第8のいた位置の地面を抉った


森羅「狙撃…」

マキ「エ…!?」

環「日下部…これ…」

森羅「レッカの時の…!」


そして再び突き当たりの建物の屋根を越えるようにアローの矢が迫ってくるのが見えた


桜備「また来るぞ!!」

マキ「下がってください!私が!」


マキが前に出て構える

バチン!という音と共に矢の動きはマキの手前で鈍くなったが少しずつ迫ってくる


マキ「はじ…はじけ…ない…炎が前に進もうとしてくる力を曲げられない!!」

『私がやる』


マキの後ろから出て矢に近づき、矢を掴むために手を伸ばす


マキ「危ないです!」

『大丈夫』


そして矢を掴み、炎をかき消すように握りつぶした


マキ「消え…た…?」

『煉合消防官だからね』

紺炉「手は大丈夫か!?」

『ほら、傷一つ無いよ?さっきは紅丸の炎だったから分が悪かったというか…それはともかく狙撃手を潰す必要がある』

森羅「俺が引きつけます!」

『私も被害の拡大を抑えてから援護に向かう、シンラが孤立するのを狙ってるはず…おそらく複数相手では分が悪いのでシンラは必ず2人以上で行動するように』

森羅「わかりました!」

『アーサー、シンラを頼めますか?』

アーサー「何で俺があの悪魔を…」

『騎士王!あの矢を切り伏せられるのは貴方の聖剣のみです、私の弟を頼みます』

紺炉「うちの姫さんの頼みを聞いてやっちゃくれないか?」

アーサー「騎士王の聖剣のみ…姫の頼み…承った!」

マキ「アーサーの使い方を心得てる…!?」

『年下の世話は慣れてるというか…』


森羅とアーサーが去り、私も動くことにした


『お父さん、紅丸の説得をよろしく。浅草をまとめられるのは紅丸だけだから』

紺炉「お前さんは…」

『上空から今いる焔ビトを全て鎮魂する』

紺炉「わかった、無理すんなよ」

『うん、ついでにそこの偽ヒカゲを締め上げて情報吐かせておいて』

紺炉「任せろ」


紺炉にこの場を任せて移動する

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