第97話

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2021/02/07 07:00
しばらく高いところを飛んで話しながら景色を楽しんでいたが、紅丸が切り出した


紅丸「そろそろ戻ってもいいんじゃねェか?その弟も待ってんだろ」

『うーん…』

紅丸「戻りたくねェ理由でもあんのか?」

『そういうわけじゃないんだけど…いやそういうわけでもあるのかな…』

紅丸「何だ?紺炉に説教されるようなことでもしたのか?」

『そうじゃなくて…』

紅丸「あ?」

『紅丸とても活躍したでしょ?』

紅丸「あなたもだろ」

『戻ったら凄い絡まれそうだなって』


夜も遅いので普段なら既に不寝番以外は寝てるところだが、こんなことが起きた後なので喧嘩後の仲直りとでも言うように酒盛りが行われてそうだ


紅丸「疲れてるから嫌だってならそのまま窓から部屋に入っちまうことも出来るだろ」

『そうじゃなくて…』

紅丸「珍しくはっきりしねェな」

『ここなら誰も来れないから浅草の人気者の若ともゆっくり散歩とか話とか出来るでしょ?それに降りたら二度と抱えさせてくれなさそうだし』

紅丸「は…?」


紅丸(そんな可愛い理由でで降りたがらないのかよ…)


紅丸「俺は構わねェが発火限界には気をつけろよ、それに腕疲れねェのか?」

『いいの!?腕も発火限界で身体能力上げてるから全然平気だよ』


予想外の答えに嬉しくなる


紅丸(あからさまに喜びすぎだろ…可愛いな…)


紅丸「俺と2人きりで嬉しいかよ」

『2人きりじゃなくても楽しいけどこれはこれでまた楽しいよ』


紅丸(素直かよ…)


『また今度こうやって紅丸抱えて飛んでもいい?』

紅丸「逆なら構わねェ」

『逆って?』

紅丸「俺があなたを抱えて飛ぶんだったらいつでも付き合ってやる」

『でも紅丸は発火能力で身体能力上げられないし翼も出せないじゃん』

紅丸「お前は軽いし俺は貧弱じゃねェからそんなもんはいらねェ、それに纏で飛べばいいだろ」

『バランス悪くない?』

紅丸「問題ねェ」

『嬉しいけど抱えるのはいいけど抱えられるのは恥ずかしいから遠慮したいかも』

紅丸「昔から何度も抱えられて移動してんのに未だに慣れねェのか?」

『目の前に見える整った顔面とどうやっても密着してるせいで存在が分かってしまういい筋肉を気にするなと?』

紅丸「今もたいして変わらなくねェか?」

『顔は紅丸の足側に顔向ければ視界に入らないし背中と膝裏に回した手くらいなら感触は気にならない、後は気の持ちよう』

紅丸「そんなに俺の顔が好きかよ」

『うん、顔に限らずその造形はすごく好き』

紅丸「顔だけかよ」

『性格も好きだけど』


紅丸(それだと全部好きだろ…ほぼ告白じゃんねェか…気づいてねェのか?)


紅丸「そうかよ…逆に俺が恥ずかしいと思ってんじゃねェかって考えや気遣いはねェのか?」


紅丸が恥ずかしがる姿は想像できない


『紅丸は生まれた時から羞恥心が存在してないでしょ』

紅丸「馬鹿にしてんのか?…それに俺も同じ状況なんだが」

『どういうこと?』

紅丸「ずっと綺麗な顔を見せられて胸板の代わりに乳が当たってんだよ」

『ちょっ…そういうこと言う!?』

紅丸「まあ俺としては役得で全然構わねェんだが」

『変態!!』

紅丸「むしろそれでも何もしねェで散歩に付き合ってんだから俺の理性を褒めて欲しいくらいだな」

『なんで先に言わないかな、落とすよ!?』

紅丸「それはやめろ…」


風に揺られて髪の隙間から見えるあなたの耳が赤いのは紅月の光のせいではないだろう


紅丸(こんな状況で2人きりで嬉しいだとか顔も性格も好きだとか意識してるみてェなこと言われて勘違いしねェ方が無理だろ…クソッ)


『はぁ…もう今更だしいいや』


落ち着きを取り戻し、諦めたように言う


紅丸「やっぱり次からは俺が抱える側だな」

『次からは胸つぶして鉄板入りベスト着る』

紅丸「そこまでして諦めねェのかよ」

『それでもやっぱり抱えられる側の方が恥ずかしいし紅丸とこうやっていつもとは違う散歩したいし』

紅丸「ポーカーフェイスは完璧だが心臓うるせェぞ」

『勝手に聞かないでくれる?』

紅丸「勝手に耳に入って来るんだから仕方ねェだろ」

『好きでうるさい訳じゃないんだけど、そもそも紅丸のせいじゃん』


自分の言動ひとつでここまで喜んだり怒ったり動揺したりする様に紅丸の先程から抑えている欲望が膨れ上がる


紅丸「…許可取れば何しても許すって言ってたよな」

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