紺炉の治療を済ませてこれから起こることを思い出し、まずい…と思った時には時すでに遅しであった
ドッ!っという爆音が外から聞こえてきた
紺炉「何だ!?今言ってたとんでもないことか!?」
『それが始まる合図です…とりあえず行こう、紅丸がブチ切れてるから』
紺炉と共に刀を持って急いで詰所から出て行ると通りに沿って爆発が詰所の方へ迫ってくる
そして詰所の近くの橋あたりで止まった
『行こう』
紺炉「ああ」
白装束の事が心配だったのと近くということもあり紺炉と共に走って向かう
到着すると紅丸と一足先に到着した第8の交戦が始まっており、第8と共に居たヒカヒナがマッチボックスの上で観戦していた
桜備「待ってください!!こちらに戦う意思はない!!」
紅丸「だったら俺を倒してその意志とやらを証明してみろ!!ここでは力こそ正義!!「戦う意思がない」ってなら戦って証明しやがれ!!」
もう言ってることが滅茶苦茶だ
マキが紅丸の攻撃を防いでその間に説得を試みようというふうに前に出るがおそらく無駄だろう
(まだ白装束は近くにいるはず)
『お父さん、少しここで待ってて』
紺炉「たが第8は…」
『大丈夫、私がこの元凶と戦って証拠を持ってきて第8の無実を証明するから…それまで絶対に割って入らないで』
陽炎で姿を消して身体強化で出来るだけ上に飛び上がり自由落下で落ちるまでの間に周りを確認する
白装束は第8と紅丸が敵対したことを確認出来る位置にいるはずだ
下を見回すと民家の屋根の上に2人の白装束が見えた
(あの顔のまま捕まえる必要があるな…炎操作でどうにかなるか?)
一度適当な屋根の上に着地し、白装束のいる屋根を目掛けて民家の瓦が剥がれて屋根に穴が空くのも気にとめずに思い切り足を踏み込んで飛び出す
屋根が壊れたことで白装束が異変に気づいた
両方捕まえるのは難しいと判断し、飛び出した勢いのまま桜備の顔をした方の首を掴んで屋根に叩きつける
偽桜備「カハッ!」
偽火縄「何だ!?クソっ…」
次の計画に移るのが優先のためか偽桜備を置き去りにして逃げていく
(片方いれば十分だな)
どう連れて帰るか思案しているといつの間にか取り出されたナイフで切りかかられる
『危ないな…』
すんでのところで空いている左手で腕を止めた、そして試しにそのまま鎖を出して腕に巻き付けてみると偽桜備の腕は焼けた
どうやら発火能力者ではないらしい
蟲を持っていて焔ビト化されてしまうかもしれないと思い、すぐに腰にさした刀を抜いて心臓を刺した
そして発火能力で形を変えられている顔が元に戻らないように刺さた刀はそのままで炎操作で顔の形を維持し、死体を引きずって紅丸と第8の交戦している現場に戻る
桜備と紅丸の一騎打ちが始まっているがギリギリ間に合った
連発される消化グレネードのせいで視界が悪いが紅丸の炎のおかげで紅丸の位置はわかる
(あー…これ正直言って間に入りたくないな…でも仕方ない、腹を括ろう…)
消化グレネードのせいで桜備と少し距離が出来たのを確認して紅丸の前方を目掛けて飛び込んだ
着地してすぐ紅丸に背を向けて体制を整えるがそれと同時に煙の中から振りかぶった桜備が現れた
私の右手は偽桜備の首根っこ、左手は細かい炎操作のために偽桜備の顔面を掴んでいる
(ああ…詰んだな)
目の前の桜備の顔はまずい…!という感じの表情だ、重装備で殴る気満々で全力で振りかぶってきたんだ…そりゃあと30cm程度で止まれるわけがない
観念して意識を失わないように足に力を入れて踏ん張ったと同時に額に衝撃と鈍痛が走る
『うっ…』
桜備「あなたの名字中隊長!?」
紅丸「あなた!?」
ギリギリ意識は飛ばさなかったが紅丸が思わず座り込んだ私の肩を掴み覗き込む
紅丸「血が…!テメェ!!こいつに何してくれやがった!」
桜備「すみません!!」
紅丸「許さねェ…居合手刀 七ノ型 "日輪"」
紅丸の手が円を描き、背後に炎が出現する
(やばっ…)
紺炉もそう思ったのか駆けつけてきた
紺炉「若!やめろ!」
紅丸「止めるな、紺炉…こいつらはこの町の連中を焔ビトにしようとしている上にあなたの額をかち割りやがったんだぞ」
紺炉「後者は許せねェですが前者は違います、あなたはこの喧嘩を止めるために割って入ったのに無駄にするんですか!?」
紅丸「知るか!!くらえ!!」
(さっき以上にやばい…)
朦朧としかかっている意識を気合いで持ち直して立ち上がり右手で偽桜備を掴んで引きずったまま駆け出す
そして紺炉が発火能力を使って紅丸を止めようとする直前に電撃で気絶させ、空いている左手で紅丸の振りかぶった腕を掴んだ
フラフラで狙いが定まらずに一度背後の炎に触れたせいでさすがに熱い
ジュッという焼ける音が聞こえたのでおそらく焼けた
『紅丸…痛いよ』
紅丸「何してやがる!?」
『いいから、これ見て』
紅丸が腕を下ろして炎を消したので私も手を離し、右手で掴んでいた偽桜備のフードを外して紅丸に見せる
額かち割られたのに気合いでここまで形状を維持したことを褒めて欲しいくらいだ
紅丸「はぁ!?どういうことだ!?」
紅丸が白装束の偽桜備と防火服に身を包んだ本物の桜備を見比べて驚いている
『第8の人もこっち来て、そんでもって誰か倒れた紺炉さん抱えてあげて…』
第8の面々が集まってきて火縄と森羅が私が気絶させた紺炉を両脇から支えてみんなが私の掴んでる偽桜備の顔を覗き込む
森羅「白装束…!それに桜備大隊長!?」
環「刀刺さって死んでる!?」
マキ「桜備大隊長が2人!?」
アーサー「どう見てもこいつは大隊長じゃないだろ」
火縄「なるほど…」
桜備「俺がもう一人…」
『発火能力で顔の形が変えられてる…今は私が炎操作で形を維持してるけどもう死んでるからそれをやめれば元の顔に戻るはずだよ』
そう言って炎操作で維持していたのを解除すると皮膚がブクブクと泡立ち、全く別人の顔へと変わった
森羅「誰だこれ!?」
紅丸「どういうことだ…」
『だから言ったでしょ…これ以上喧嘩しないで』
そう言って元・偽桜備から刀を引き抜いて仕舞う
『戻るよ…』
しかし歩き出そうとしてぶっ倒れた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!