私が自警団の仕事を手伝い始めてから1ヶ月ちょっと経った
何度か焔ビトの鎮魂もした
危険な仕事ということでお給料も出てる
世話になってるからいらないと言ったが
紺炉さん曰く「今は使わなくてもこの先必要になるかもしれないから貰っておけ、あのやる気のねェ紅にも給料は出てるんだ」との事だ
そんなある日のこと
今日もいつもと変わりない1日だった
『そういえばもう2月も半ばか…早いな』
紺炉「そういや紅の誕生日だな」
『いつなの?』
紺炉「今月の20日だな」
『浅草じゃやっぱりみんなで宴会とかする感じ?』
紺炉「だいたいそうだな」
『そっか…』
(なんかあげようかな…でも何がいいんだろ)
そんなことを考えてると叫び声が聞こえてくる
「火事だ!」
「焔ビトが出たぞ!」
『行かないと』
紺炉「ああ、それにしても今年は多いな…」
そんな何気ない一言が引っかかった
焔ビトの鎮魂はいつも通りすぐ終わり、詰所に戻ってきたが焔ビトが今年は多いというのが気になって詰所にいた人に聞いてみた
『すみません、焔ビトの出現記録とかあります?』
火消し「あるぜ、ちょっと待ってな」
焔ビトの出現場所や被害者の名前や日付が書かれた冊子を渡される
去年の1月のページと今年の1月のページを見比べる
(たしかに多い…去年の年末くらいから少しずつ増えてるような気が…)
私がここに来たのは11月の初め
(もしかして…)
嫌な予感がする
『ありがとうございます、これは戻しておいてくれますか』
火消し「もういいのかい?」
『はい、ちょっと気になっただけなんで』
冊子を返して部屋に戻る
(いや…まさか…)
浅草の大火事が起きるのは2年前って言ってたから196年のどこかのはず
(まだ2年はあるはずなのに…もう白装束がここに潜伏してる…?)
考えたくないが最悪の状況が頭をよぎる
(もしも私のせいで浅草の大火事が早まったら…早くから紺炉さんが灰病になって頭がいなくなったら紅丸はやっていけるのかな…)
そんな不安を抱えながら気付けば一日が終わり、眠りにつく
(とりあえずこれからどうするかまた明日考えよう)
深夜
嫌な夢を見た
燃える町
逃げ惑う人
焔ビトに変わる優しい町の人たち
倒れる紺炉さん
絶望する紅丸
『……!』
魘されて目が覚める
冷や汗が流れ、血の気が引く
(最低な夢だ…でも本当にああなったら…もしかしたら紅丸がまだ若いせいで焔ビトの鎮魂に本来より手間取って発火限界が早まって鬼と相打ちになる可能性だって…)
私がいるせいで焔ビトの数も増えるかもしれないし白装束も出てくるかもしれない
(これ以上ここにはいられない…)
答えは決まった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。