第53話

盗撮
2,565
2021/01/23 20:17
季節は夏



新人大会以降、これと言って変わったことも無く過ごしている


せいぜい変わったことがあるとすれば第7というか浅草に馴染み過ぎて紺炉の呼び方…紺炉さんとお父さんの割合が8:2くらいから傾いてきて3:7くらいまでいったことくらいだろう




そして、ついにヌードカレンダーの写真を提出するようにという通知が届いた


ちなみに我が隊の若はそんな通知が届いたことさえ知らない



『もちろん紅丸を撮るんだよね?』

紺炉「ああ、皇国のやつに負ける訳にはいかねェ…だが素直には撮らせてくれねェだろうな」

『お父さん、銭湯に行く日を狙おう』

紺炉「その手があったか」




そしてその日の夜


食後、紅丸がそのまま部屋に戻るでも縁側に行くでもなく詰所を出て行こうとする


『どこ行くの?』

紅丸「銭湯だ」

『それなら一緒に行こうかな』

紅丸「珍しいじゃねェか」

『大きいお風呂は好きだけどあまり見られるのは得意じゃないというか…だから誰かが行くって時に着いていくとかじゃないと行く機会がないからさ』

紅丸「女にも人気があるから仕方ねェだろ」


そう言いつつ紅丸は何となく苛立ちを覚える


確かに目の前の少女は…

男には見えないが中性的で荒事とは無縁に思える傷一つない綺麗な顔

紅丸より数cm低い程度の女にしては高い身長に服の上からでもわかるような細いのに発育も良くてある程度筋肉もついている均整のとれた体型

そして鎮魂や喧嘩の仲裁の時は荒々しいが普段は穏やかで社交性もある性格

そんなことから性別など関係なしに様々な好意を向けられている


『紅丸ほどじゃないよ』

紅丸「俺は同性からは滅多にそういう目で見られねェよ」

『それはまぁ…でも女の人からは紅丸の方が人気でしょ?』

紅丸「そうでもねェらしいぞ」

『ないない、それより銭湯行くんでしょ?私も銭湯行ってくるって紺炉さんに一声かけてから着替え持ってくるから待っててよ』

紅丸「やっぱり…」


行くのはやめると言おうとしたが時既に遅しというやつだ、待っていてくれと言い終わると同時に去っている


紅丸(女でもそういう目で見てるやつが銭湯だってのをいい事にアイツの体をヤラシイ目で見てるかもしれねェと思うと気に食わねェ…銭湯なんか行かせたくねェな)


紅丸がそんなことを考えていると着替えを持ったあなたが戻ってきた


『それじゃ行こうか』


(お父さんに盗撮のチャンスだって伝えたし完璧)


紅丸「ヒカゲとヒナタも呼んでこい」

『…?いいけど、先行かないで待っててね』


どうせ銭湯に行くなだとか行くのをやめるだとか言っても意味がないだろうと思った紅丸なりのせめてもの抵抗だ

少ししてヒカヒナを連れたあなたが再び詰所の入口に戻ってきた


『じゃあ行こうか』

紅丸「ああ」

ヒカヒナ「広い風呂だ!遊ぶぞ!」

『程々にね』


銭湯に向かう


『せっかくだからゆっくり入りたいし、ヒカヒナもいるから…1時間後にね』


あなたと一緒に女湯の方へ入っていこうとするヒカヒナを呼び止める


紅丸「ヒカゲ、ヒナタ…お前らのェちゃんに変な虫がつかねェよう周りで泳ぐなり走るなり好きに暴れとけ」

ヒカヒナ「よくわかんねェけど暴れとけばいいんだな!」

紅丸「ああ、団子でもババァの大福でもやるから俺が暴れろって言ったのは黙っとけ」

ヒカヒナ「いいぜ!」



もちろんこの後、風呂場であなたが頭を抱えることになったのは言うまでもない



今日は一段と騒がしかったヒカヒナを連れて風呂を出る


『お待たせ』

ヒカヒナ「バッチリだぜ!」

紅丸「よし」

『は?』

紅丸「何でもねェ」



詰所に帰って紺炉の部屋に行く


『戻ったよ』

紺炉「おかえり」

『どう?良い写真取れた?』

紺炉「ああ、何枚かあるんだが」

『見せて見せて』

紺炉「若に見つかりゃカメラごと燃やされかねねェし股間は写しちゃなんねェっていうもんだから苦労したぜ…」


確かに縛り有りの高難易度任務という訳で後ろ姿がほとんどだ

完全に後ろ姿しか見えないものや横からだがあらぬ方向を向かれて顔の写ってないものや完全に湯船に浸かってしまって胸から上程度しか写ってないものなども多く、使えそうなのは数枚といったところだ


(それにしてもいい体してるな…)


紺炉「俺としてはこれが良いと思ってんだが、あなたはどう思う?」


首に手ぬぐいを掛け、湯船の縁に腰掛けて前髪をかき上げているのを斜め後ろから撮った写真を渡される


『とてもいいと思う』

紺炉「ならこれにすっか」

『カレンダーの出来上がりが楽しみだね』

紺炉「ああ、皇国でも若の人気が出るかもしれねェ」

『そうだね』


それを聞いて何故か少し不快に感じる


(紅丸の人気が出るのはいい事なのに…なんかやだな…なんだろ)

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