翌日、浅草に着くと浅草じゃ珍しい青線の防火服を着た人が大勢いた
今日もとりあえず詰所に向かう
紺炉の部屋に行くと紅丸もいた
『おはよう』
紺炉「おはよう」
紅丸「ああ」
『消防隊が来てたけど何かあったの?』
紺炉「昨日の夜に特殊消防隊設立の件を受けるって連絡したら今朝さっそく物資なんかを持ってやって来て復旧作業を手伝うってな」
紅丸「皇国の犬は気に入らねェが」
『浅草が早く元通りになるならいいじゃん』
紺炉「正式な手続きは復旧が済み次第で構わねェとの事だが、とりあえず自警団を第7特殊消防隊としてこの詰所を少し手を加えてそのまま使うことになった」
『じゃあ移動とか取り壊しとかは無しで済むんだね』
紅丸「この詰所は代々自警団のモンだ、取り壊させるわけねェだろ」
紺炉「まぁちょっとした改装程度だ、2、3日もすりゃ終わんだろ」
その言葉の通りに3日後には入り口に「七」と書かれた暖簾が掛けられ、裏庭の障子などにもにも同じ文字が入り、「第七」と入った灯篭が出され、内装も襖やら畳やらの張り替え程度だが少し新しくなった
大火事から1週間程で町の復旧も終わり、いつも通りの浅草が戻ってきた
今日は町の復旧祝い兼、第7設立祝いみたいなもので人が集まっている
紺炉「浅草火消しは正式に特殊消防隊として認められ第7特殊消防隊となった、これからは俺の代わりに紅丸が若頭として浅草を引っ張っていくことになるから協力してやってくれ」
紅丸「今回の大火事で浅草のために戦って灰病になっちまった浅草火消しの頭である相模屋紺炉に代わって浅草の町を預かることになった新門紅丸だ、名前が変わろうと俺たちのやり方は今までと何一つ変わらねェし皇国の犬に成り下がるつもりもねェ!紺炉ほど出来た人間じゃねェがこれからは俺なりのやり方で浅草を守っていくつもりだ、よろしく頼む」
「若!!」
「どこまでもついて行きやす!」
「立派になりやしたね!」
様々な声が上がるが反対するものは居ない
紅丸が好かれている証拠だ
紅丸「今日は祭りだ!1週間前の大火事で焔ビトになって誰かもわからずに鎮魂されちまったやつもいる、ただ火事に巻き込まれて死んじまったやつもいる…死んでいった奴らのためにも手向けとして全力で騒げ!」
紅丸の言葉を合図に騒がしくなる
隣にいる紺炉に話しかけられた
紺炉「明日、皇国に行って正式な手続きをする予定だ」
『じゃあ荷物をまとめておくよ』
(生きているのにこの言い方は変かもしれないが…ついに生き返れるのか)
そう思ってたら紅丸もやって来た
紺炉「若、先程の挨拶は立派でした」
『うんうん、紅丸はやっぱり人の上に立つ素質があると思うよ… …ってこれからは大隊長なわけだし新門大隊長とか若とか呼んだ方がいいのか』
紅丸「2人とも他人行儀なのはやめろ」
何だか機嫌が悪そうだ
紺炉「今日はまだいいが明日からは正式に大隊長になンだ、俺じゃなくてお前が頭だってことをハッキリさせなくちゃなんねェ」
『そうですよ、若』
紅丸「紺炉は百歩譲ってわかるがあなたの本名に似た男装用の偽名はやめろ…」
『平の隊員が大隊長にタメ口の呼び捨てとかまずいですって』
紅丸「浅草の破壊神が何言ってやがる、何ならお前も紺炉と同じ中隊長にするつもりだ」
『はぁ!?何勝手に中隊長にしようとしてんの?紺炉さんは反対だよね?』
紺炉「いや、俺も賛成だ」
『ウッソだろおい…中隊長の座、軽すぎかよ…綿毛もびっくりなレベルの軽さだわ』
紅丸「面白ェこと言ったって変えるつもりはねェぞ」
紺炉「大丈夫か?キャラ崩れてんぞ」
『荷が重い……』
紺炉「お前もいつも通りで構わねェんだよ」
落ち着かせるように頭を撫でてくれる
『本当に?』
紺炉「俺も紅もいつも通りのお前を見て決めたんだ、変わる必要も気負う必要もねェよ」
紅丸「今まで通りでいろ」
『わかった…それならやるよ』
そういう訳で私は中隊長になるらしい
祭りは夜まで続いたが私は明日に備えて早めに戻った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。