ふと思い出したようにジョーカーが話を切り出す
ジョーカー「そういや話がズレたが拾われてからずっと浅草にいたのか?」
『白装束に目をつけられたから数ヶ月で浅草からは出たし第7ができる少し前まで皇国で人道に反した行為で金稼いでた』
ジョーカー「臓器売買か何かか?」
『そんなもんだよね、焔ビト売ってた…ヴィクトル・リヒトから聞いた事ない?』
ジョーカー「第5の大隊長とは別に欠損無しで焔ビトを持ち込んで売ってる奴がいるってのはなんか聞いたなァ」
『それそれ、その焔ビトは出どころ何処だと思う?』
ジョーカー「蟲で作ったか?」
『大正解』
ジョーカー「そんなもんどこで手に入れたんだ?わざわざ焔ビトを作って売るなら蟲売った方がよかったんじゃねェか?」
『そりゃもちろん白装束から…人に危害を加えるならばいつか自分に返ってくる覚悟をしなきゃいけないんだよ、目には目を歯には歯を…蟲には蟲をってね』
ジョーカー「それなら今までの検体は白装束ってわけか」
『そういうこと、まぁ蟲使いたくないってやつはそのまま一思いに殺してあげたからみんな望んで焔ビトになったやつだよ』
ジョーカー「まさか浅草の神様ともあろう奴が汚れ役をしてるとはな」
『浅草の皆で安心して酔っ払える世界が見たいっていうのが私を拾ってくれた人の夢だから、それを叶える為ならどんな汚いことでもするさ』
ジョーカー「健気だなァ」
『まぁそう言うと聞こえはいいけどただの好きでやってる人殺し、神様なんて呼ばれてる私も指名手配されてるジョーカーも好き勝手やってるだけでたいして変わらないよ』
理由がなんであれ私は人殺しだ
ジョーカー「何が違ってこうなってんだかな」
『あの12年前の火事の時、弱いながら必死に逃げた私たちの先がこうも違うのはきっと拾ってくれた人が強かったか弱かったかなんだろうね…』
ジョーカー「弱いやつに他人を助ける余裕なんてなかったのにな」
『力さえあればだいたい何でもできる…逆に力がなきゃ奪われて死んで真実さえ知ることが出来ない世界なんて最低なのかも、いっその事なにも知らないでのうのうと生きてられた方が幸せなんじゃないかな』
ジョーカー「それでも俺は知りたいんだよ、それに希望に満ちた真実があるなんては期待してねぇよ」
『それならまだ多少時間はあるわけだしゆっくり探すといいよ、私の口から聞くんじゃ味気なくて絶望感増しそうだし』
ジョーカー「そう言われると尚のこと知りたくなっちまうじゃないか」
『好奇心は猫を殺すっていうのにね…まぁいいや、そろそろ時間だし私は帰る前にお仕事しにいかなきゃ』
ジョーカー「第7の管区じゃねェのに何の仕事だ?」
『汚れ仕事だよ』
ジョーカー「白装束か」
『そう、あまり時間かけられないから何か情報ない?怪しい場所とかさ』
ジョーカー「案内役を買ってやってもいいぜ」
『それじゃこれから行こうか、そうだ…あと面白いこと思いついて浅草に来たときは私を通してほしいんだよね』
ジョーカー「それくらいなら美味い弁当とチキンの礼にいいぜ、道から外れたもん同士仲良くしようや」
『はい、私の連絡先渡しておくからなんかあれば連絡して』
ジョーカー「何もなきゃ連絡しちゃ駄目なのか?」
『別にいいけど基本的には忙しいからそんな連絡されても返せないよ?』
ジョーカー「つれねぇなァ」
ケースから刀を出してズボンのベルトにさす
『それより早く行こうよ』
ジョーカー「物騒なもん持ち歩いてるしせっかちな嬢ちゃんだな」
『発火能力者ならまだしも丸腰で出歩く人の気持ちがわからないし、発火能力者でも発火限界来たときのために武器は必要でしょ』
ジョーカー「言ってることは正論なんだがなどうにもなァ…」
『これも生きるためだよ』
ジョーカー「世知辛いぜ」
刀ケースは布製なので畳んで仕舞い、リュックを背負ってから秘密基地を出た
ジョーカー「荷物も持っていくのか?」
『そりゃ今日中に帰るって言ったからね、すぐ帰れるように荷物も持っていくよ』
ジョーカー「それは邪魔になって死ぬ確率が上がるんじゃねェのか?」
『この程度で剣筋が乱れるような稽古は受けてないから大丈夫、それに説教の方が怖い』
ジョーカー「嬢ちゃんの安全の基準はわからないな…」
ジョーカーからすると私は何だか色々と不思議らしい
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。