第51話

五十一話
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2021/06/08 20:00
焦凍side

守宮が今日退院して、学校に来る。

つまり今日から寮なわけだが、

病院で最後の検査を受けて途中から来るらしい。

そして今は、お昼休憩。

ほぼ全員がソワソワしている。

あんなことがあったんだ。

記憶喪失していた守宮に皆驚いていたが、それよりも、、

記憶喪失する前の守宮が、俺たちの知ってる守宮じゃなかったから。

もし、前の守宮じゃなかったらどうしよう。

五条さんと話しているときの守宮は、普段聞いたこともない敬語で。

しかもその声は微かに震えていた。

俺はそんな守宮を見て、、、

どう接すれば良いん、、、
ガラガラガラッ

皆:ビクッ

愛騎:おはよー!

麗日:え、、、、

皆:ええええ!!

焦凍:も、守宮、、、?

八百万:愛騎さん、、、?
ドアを勢いよく開けたのはまさかの守宮だった。

、、、良いんだが、、別に、その方が良いんだが、

拍子抜けしたというかなんというか。

そこまで暗くなっていない守宮を見て、まずは安心した。
愛騎:、、、皆、ごめんね、巻き込んじゃって。家族の問題なのに。私が耐えれば良い話だったのに。

響香:そんなこと、

愛騎:皆は優しいから許してくれるって知ってた。でも、、それだと私が申し訳ないの。しかも、私が、、ヒーローを目指した理由は皆みたいにキラキラしたものじゃない。私の周りにいるほとんどの人がヒーローを目指していたから。記憶喪失して、何もかも忘れて、、やりたかったことも忘れてしまった。なんとなくヒーローを目指して、なんとなく雄英に入って、なんとなく生活してきた。それがとても、、皆に申し訳ないの。

麗日:愛騎ちゃん、、

焦凍:それはチゲェだろ。

愛騎:え?

焦凍:お前はちゃんと、「守りたいから」ヒーローを目指してる。じゃなきゃ、USJでも、期末テストの実技でも、身を挺して他のやつを守ろうとなんかしないだろ。

愛騎:っ、、

緑谷:そうだよ守宮さん!僕たち、守宮さんに沢山助けてもらったんだ!!しかも、記憶喪失しちゃったんだから、ヒーローを目指す理由がちゃんとしてなくたって問題ないし、、これは僕の勝手な意見だけど、、記憶喪失してまで「ヒーロー」っていう職業に目が行って目指してるんだからさ、、自分が気付いてないだけで、本当は記憶喪失する前からヒーロー目指してたんじゃないかな、

切島:絶対そうだろ!!

瀬呂:じゃなきゃ「なんとなく」でここに合格なんてしないしな!

愛騎:っ、、ごめ、、本当に、ごめん、、ありがとう、、ありがとう、、、!
今までの笑顔はどこか、「作っている」ように見えた。

ただ、今、俺の目の前で笑っているその顔は、、

今までで見た笑顔の中で1番綺麗で儚げで、美しかった。

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