第22話

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2019/10/12 15:03
楽しかった休暇を終え、私はひと足早く仕事が始まった。



あなた
あなた
いってきまーす…
あと1日オフがあるメンバーたちを起こさないように、そっと宿舎を出る。

よし、ミッションコンプリート。
私は昨日の疲れが少し残る体を引きずりながら、事務所へと向かう。



社長
社長
おお、おはようあなた。悪いな、一日早く出社してもらって
あなた
あなた
いえ、大丈夫ですよ!十分休みましたし!
社長
社長
そうかそうか。今日はお使いみたいで悪いんだが、この前レコーディングしたデータを製作局まで持っていって欲しいんだ。

いつもは郵送するんだが……思いのほか編集に時間がかかってしまってな、郵送したら間に合わないかもしれないんだ
あなた
あなた
わかりました。任せてください
社長
社長
助かるよ。それが終わったら今日はもう帰って大丈夫だから。
あなた
あなた
はい!それでは行ってきます!


出来たてホヤホヤの、みんなの苦労が詰まったデータを大切にカバンにしまい、私は事務所を後にした。


制作局は電車で2時間くらいだ。


あなた
あなた
(あ、カトク来てる)
ウソク
ウソク
あなた〜、今日は仕事なの?
あなた
あなた
そうだよ〜。でもお昼過ぎには帰れそうだよ
ウソク
ウソク
ほんと?帰ってきたら俺の部屋で映画みようよ
あなた
あなた
なんでウソクの部屋なのよ…
ウソク
ウソク
いいじゃん〜。じゃあそういうことだから。


結構勝手なやつだ。
とりあえず早く仕事を終わらせて帰ろう。


そうこうしているうちに、目的の駅に到着した。駅からは歩いて10分くらいだ。


地図を確認し、私は大きな通りに出た。


あなた
あなた
……んん?
何やら後ろが騒がしい。
悲鳴と、オートバイの音………?
あなた
あなた
っっきゃっ!!?
ものすごい勢いで走ってきたオートバイは、私が肩にかけていたトートバッグを思いっきり掴んだ。


うわ、うわわ、どうしよう!!
大事なデータが入ったバッグを離せるはずもなく、私は無情にも引きずられている。


ああ。自分が最強トリップ主でなかったことをこんなに恨んだことは無い。


??
チッ……くそ、離せ!!
絶対に離すか!!
だけどもうめちゃくちゃ足が痛い!いや、ほんと誰か助けて。


??
くそっ……うわっ!!
よそ見をしていたバイクは横転し、なんとか私はカバンを取り返した。

命からがら、といったところだ。

ぼんやりと後ろを振り返ると、私の血だと思われるものが広がっている。
いや、まじで足痛いよ。



駆け寄ってくる人達と、救急車のサイレンの音。
そして警官に取り押さえられるバイクの運転手の顔………。



あなた
あなた
これ……これ、届けて……

その言葉を最後に、私の意識は途切れた。

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