ふわふわする。
こんなにお酒を飲んだのは初めてで、何が何だかもうよく分からない。
ぼんやりする頭を稼働させ、重たい目を開いてみると俺の腕の中にすっぽり収まるあなたに気がついた。
……俺たちあのままリビングで寝ちゃったのか……
まじで飲みすぎた。
くだらないヤキモチなんか焼いて、1人でお酒を飲みすぎた。
そんなこととは露知らず、彼女はというとすっかり眠りこけている。かわいい。
好きだとは言ってくれたけど、じゃあ俺たちの関係ってなんなの?
俺がいるのに、なんで他の男と仲良くするの。なんで嬉しそうに笑うの??
黒い感情がどろどろと流れてきて止まらない。人を好きになるってこんなに大変だったっけ?
眠るあなたの頭を撫でると、気持ちよさそうに頬が緩む。
その姿を見ていると、細かいことなどどうでも良くなって。
ただ君が俺の隣で、いや俺の隣じゃなくても、幸せに笑っていてくれればそれでいい。
ぼやぼやした顔のあなたが俺の顔を見上げた。
俺がわざと意味深な返答をすると、あなたは途端に慌てだした。
ぽかすか、とあなたは俺の胸を叩いた。
もごもごと口を濁すあなたが可愛くて、余計にからかいたくなる。
うわーなんかやっぱり思い出してムカムカしてきた。例えほっぺだとしても他の男にキスして欲しくない。
わざとらしくため息をついて、意地悪く言ってみると、あなたは次第にオロオロとし始めた。
はてなを頭に3つくらい浮かべたあなた。
そんな姿も可愛くて、俺って末期だなって思う。
逃げようとするあなたの腰をしっかり抱きしめた。
あなたは観念したように俺の顔を覗き込んでいる。かわいい。ほんとに可愛い。
言われた通りに目を瞑ると、3秒くらい経過してから柔らかいあなたの唇が一瞬だけ触れた。
え、それだけ?短くない?
むすっと拗ねてしまった。
え、俺からしていいの?それはそれでなんか、あれだね。
何回も何回も角度を変えてあなたの唇に自分の唇を押し付けた。
最後にあなたの唇をペロッと舐めてみると、あなたは本当に恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
そんなあなたの姿を見ていたら、どうしてもこう言わずにはいられなかった。
あなたが俺の立場と自分の立場を考えて、付き合わないという選択をしていたのも知っていたし、理解もしていた。
でもやっぱり無理だ。
昨日みたいに頬にキスしてるのを見るだけでもどうしても腹が立つし、こんな可愛い顔も反応も全部俺のものにしたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!