渡井夏樹は頭を抱えた。
自分は俗に言うひもだ。
みんなに残念イケメンと言われてきた。
また、また、また、、ダメだったか。
今回は結構頑張った方だった。
家事は七瀬がいない間やったし、節約も頑張った。
なのに、七瀬が消えた。
普通の人なら置き手紙とかないから俺の彼女がピンチだ!と思えるのかもしれない。
でも、こうして恋人との別れ方にあったのはこれが初めての事じゃない。
どうしてみんな俺から離れてくんだろう…。
やっぱり仕事探そうかな…。
一応飲食店のバイトはやっている。
でも、それだけだった。
夏樹は気分転換に散歩しようと外に出ることにした。
ドアを開ける。
ガチャ……?!
女の子だ。女の子がいる。。なんで部屋の前にいるんだよ。。。
ドアを閉め用とした時、小さな手がドアを止めた。
夏樹はその子をじっと見た。びっくりした。
女の子の腕にはあざがあった。
きっと嘘だと思った。
思いたかった。
だけど、こももという子の腕のあざがちらつく。
本当に?虐待?
だとしたら俺はどうすればいいんだろう。
きっとこの子だって、家に帰ってまた新しいあざを増やすよりは静かなどこかに身を隠してたいはずだ。
うっ………。それは違うけど、どうしたものか。
でも、そう言われると…。
やっぱり家に入れようか。
もしこももちゃんのお母さんが俺を通報したらまずいなー…(^^;
どうしよう……。
でもきっと七瀬なら。
って言いそうだな……。
こももちゃんは、もう椅子の上にちょこんと座っていた。
なんだか、七瀬みたいだな。
満面の笑みを浮かべたその顔はとても虐待を受けているとは思えなかった。
やっぱりこの子の年代は転んだり怪我してあざ作っちゃうから、腕のあざもそういうことなのかな…。
あれ、俺の思い違いか?
もしかしてあれじゃないのか。
ちゃんと○○できない子はもうおうちに帰ってこなくていいわ!っていうスパルタ教育家庭なんじゃないのか。。
生まれて来てはいけない?
望まれなかった子?
どういう事だ。
こもも、きみは……。本当にひどいことを言われてされて…いたの?
でも、、子供はオーバーに言うことがあるし、、。一回家に返した方がいいんだろうな。
こももが笑顔になった。
それが無性に嬉しくて俺も笑顔になってしまった。七瀬に逃げられたばっかりなのに。
全く……。
だから俺はダメなんだな…。
七瀬……。お前、今どこにいるんだよ…。
こももが笑った時、どこかで七瀬がふわっと笑ったような気がして、どこかくすぐったかった。
こももは、ドアをパタンと閉めて家を出ていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。