雷光がオムライスセットを食べながら言う。
それに比べ爆豪は激辛ラーメンセットというものを食べている。
爆豪が聞くと雷光は手を止めた。
爆豪は意味もないのに泣いたのか、という顔をしている。
爆豪の言葉に雷光は目を見開く。
爆豪が何かを言いかけるといきなり「ウウーー」と何かの警報が鳴りだした。
「セキュリティ3が突破されました。」
「生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください」
と、アナウンスが校内に鳴り響いた。
落ち着いた声色で前の席に座っていた(先輩であろう)男の人たちに聞いてみた。
食堂の扉には幾人もの人がごった返しており、とても逃げられそうにもない。
雷光はそう言って窓際に立つ。
と、爆豪が雷光の後ろに立って吐き捨てた。
席に戻るため、反対側を向こうとすると人の塊が雷光と爆豪の方へ向かって来て二人は流れに巻き込まれた。
雷光は人波に流されていく。
すると壁際にいる爆豪が雷光に向かって手を伸ばした。
その手を掴もうと手を伸ばすがもう少しというところで届かず、手が空を切る。
そして互いにこれでもかと手を伸ばす。
軽く手が触れ合い、ギュッと爆豪が雷光の手を握る。
グイッと雷光の手が引かれる。
気が付くと雷光は爆豪の胸に顔を埋めていた。
そして守るように雷光を壁側にして爆豪は腕を壁に着けている。
所謂壁ドン状態。
だが普通の壁ドンとは違い、手のひらではなく腕を壁に付いているため、通常よりも密着度が高い。
爆豪はそう言うと顔を赤らめてそっぽを向いた。
トンッと爆豪は背中を押され、二人の体は更に密着した。
雷光はふと目の前にあった爆豪の胸に耳を当てた。
──────トクッ、トクッ、トクッ、トクッ。
心臓が一定のリズムで脈を打っていた。
静かに目を瞑る雷光を見て爆豪は抱きしめようとするが躊躇した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!