~義勇目線~
無惨との戦いは終わり、
鬼殺隊は役目を終えた。
たくさんの仲間の尊い命が失われた。
俺はあなたとの約束通り、
無事あなたの元に戻ることができたが…
腕一本失うだけで済んだのは、
運が良かったに過ぎない。
…これは、最後の柱合会議の
前日の話である。
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縁側であなたと過ごす昼下がり、
俺はふと思い立って、
あなたに散髪を頼んだ。
あなたの優しい笑み。
ああ…
俺に向けられるこの優しい笑顔。
あなたはお腹に
俺との子を宿している。
また会えて本当に良かった…。
甘えてと言ったな?
ならば遠慮なく甘えてやる。
鬼はもういない。
あなたと命ある限り一緒に過ごしたいんだ。
一分一秒も無駄にしたくない。
そして風呂…。
手ぬぐいを股にかけ
腰をかけると、
戸を開けてあなたが入ってきた。
あなたは、着物のまま
たすきで袖をまくっていた。
あなたは脱衣所で着物を脱いでくると
俺の後ろに膝をついた。
お腹は、柔らかに丸みを帯びている。
あなたが俺の髪の間に指を刺し入れて、
うなじを、つっ…となぞった。
つい、声が出てしまった。
あなたが俺の髪を
情事の最中に、そんな風に見ていたとは…。
しまった、そんなこと考えていたら
おさまらなくなってしまうではないか/////
俺のうなじをなぞるあなたの手首を
つかまえた。
俺の下半身にかけていた手ぬぐいは、
天を仰ぐように、そそり立ち、
行き場を失っていた。
かわいいことを言うこの口を
早くつかまえたい。
あなたが俺の前にペタンと座り込む。
なんてかわいい…。
俺は、もはや意味を成さない手ぬぐいを
片腕ですばやく取り払った。
つづく…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!