そう言いながら、無邪気な笑顔であたしの頭を少し乱暴になでる。
あんなに張りきっていたくせに、緊張のせいでうまくしゃべれない。この感情を、どう表現したらいいんだろう。
「ビビッときた」なんてよく聞くけれど、もっと大きななにか。
「恋に落ちた」なんて、甘い言葉も似合わない気がした。
表現の仕方がまったく思いつかない。
こんな感情を抱いたのは初めてだから。
……この人が、ほしい。
一瞬 目が合っただけで、あたしはもう釘づけだった。
〝秋山〟に不思議そうな顔で見られた時、やっと目をそらすことができた。
あたしの名前を呼ぶぶんちゃんの声にも反応できなくて、聞こえるのは、自分の激しい鼓動だけ。
時間が止まったような気さえした。
顔だけじゃなく、全身が熱い。きっと今、顔真っ赤だ。
……こういうの、なんていうんだっけ。
ひと目ボレって、いうのかな……。
大げさかもしれないけれど、運命さえ、感じた気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。