第8話

小さな奇跡
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2019/11/10 15:12
私
だからね、ほんっとにヤバかったんだって!
あーずー
わかったってば。一週間もずっと同じこと言わないで!
体験入学が終わってから早一週間。
あたしはいまだ興奮を抑えきれず、昼休みになると決まって、〝秋山〟の話をあーずーに繰り返し話していた。
私
だって、ほんっとにヤバイくらい……
あーずー
好みだったんでしょ?わかったってば
あーずーは毎日同じことを言い続けるあたしに、だいぶあきれ気味だ。
まぁ、あたしが逆の立場なら、三回目でうんざりすると思うけど。
あーずー
でさ、かっこいいのは十分わかったけど、結局どうなったの?
あーずーには、ただ〝かっこいい人がいた〟としか話していない。
どう説明しようか迷いながらも口を開いた時、横からさえぎられた。
ぶんちゃん
固まったあげく、顔真っ赤になっちゃって、話すことすらできなかったんだよ。ねー?
割りこんできたのはぶんちゃん。ニヤニヤしながら、あたしの方をポンポンと二回たたく。
……近くにいなかったはずなのに、どこから出てきたんだが。
あーずー
えっ!そうなの!?あなたが!?
いつだって強気で物怖じしないあたしの意外なエピソードを聞いたあーずーは、大げさに驚く。
ぶんちゃんに強めに一発蹴りを入れた。
ぶんちゃん
いってぇ!スネはなしだって!
私
お前うるさいんだって!余計なことばっか言うからじゃん!
本気で怒ったわけじゃないけれど、本当に恥ずかしくて。こんな気持ち初めてだったから、どうしたらいいかわからないんだよ。
お詫びの印に、ぶんちゃんの背が伸びるようにと給食の牛乳をあげると、あーずーが興奮気味に言った。
あーずー
じゃあさ、駅前のゲーセン行こうよ。あそこらへん高校生の溜まり場だし、その人もいるかもじゃん
さっきまであきれ果てていたはずのあーずーは、あたしが「かっこいい」と連発する男をひと目見てみたくなったらしい。

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