第4話

出会い
334
2019/03/30 12:19
9月下旬。
まだ暑さが残っていた上旬とは打って変わって、昼間でも少し肌寒い。
約束通り、ぶんちゃんに連れられてあたしは体験入学した。
今日は土曜日。
休日の日に早起きなんて、学年一の遅刻魔を誇るあたしにとっては、ものすごく苦痛だ。
私
ねぇぶんちゃん、かっこいい人いるかなあ?
ぶんちゃん
お前ね、趣旨が違うでしょ。男あさりにいくんじゃないんだから。
男あさりとまではいかないけれど、休みの日まで勉強なんかしたくない。
とにかく、めんどくさくてしょうがなかったあたしが見つけた、唯一楽しめる方法。
それは、『かっこいい人を探す』こと。
ぶんちゃん
いたとしても、あなたなんか相手にされないって。
私
うっさいな、どうせブスですよ。でも、かっこいい彼氏はほしい!
ぶんちゃん
ブスなんて言ってないだろ。恥ずかしいから大声出さないでくださいよ。
ぶんちゃんがこぐ自転車の荷台に乗り、あきれるぶんちゃんを無視してはしゃいだ。
私
いい人いたらいいな……
ぶんちゃんの背中に額をあて、そっとつぶやいた。
秋風があたしの横をすり抜ける。
短くしたスカートから伸びた足にすっかり冷たくなった風があたりヒリヒリと痛む。
ぶんちゃん
新しい出会いだらけだもんね。きっと、いい人いるよ。
私
そうだといいな。
額を離し、うつむいたまま小さく微笑んだ。
私
一緒に受かりたいね。
ぶんちゃん
あれー?私立受けるんじゃなかったの?
ついポロッと言ってしまったひと言を、ぶんちゃんがからかうためのネタとしてしっかり拾う。
私
うるさいってば。てか、みんなで同じ高校行きたい。
ぶんちゃん
無理だよ。バカあなたとは、みんなレベルが違うから。
からかうぶんちゃんの背中を強めにたたくと、自転車が揺れた。
バカって、どう考えても余計でしょ。
ぶんちゃん
いってー!
私
次また変なこと言ったら殴るから。
ぶんちゃん
……はいはい。もう殴ったと思うけど。
レベルが違うなんて、そんなのよくわかってる。
あーずーの志望校なんて、市内でトップの高校だし。
学年でほぼ最下位のあたしには、その高校名を願書に記入することすらありえない。
ていうか、こないだ書こうとしたら、担任に「真面目にやりなさい」ってこっぴどく怒られた。
……でも、寂しい。
ずっと一緒にいたのに、離ればなれなんて。
ふたりのいない生活なんて考えられない。
強がりで意地っぱりで生意気で。
こんなあたしを理解してくれる友達なんて、この先つくれる自信がない。
あーずーやぶんちゃんみたいに心を許せる友達ができるか、本当に不安なんだ。
素直にそう言えたらいいけれど、意地っぱりのあたしには到底無理な話。
でも、きっと……ぶんちゃんは、言わなくてもわかってくれている。
私
あと何分?
ぶんちゃん
もう着くよ。
私
マジ?リボンどこやったっけ。
ぶんちゃん
制服くらいちゃんと着とけよ。とりあえず、スカート短すぎ。
私
うるさいなぁ。
横断歩道を渡って右に曲がると、やたらと大きな建物が見えた。中学生のあたしにとって、『高校』は未知の世界。
高校生の自分なんて想像もつかない。
……どんな人がいるんだろう。
でも、不安なんて微塵もない。
期待だけに胸をふくらませ、あたしは未知の世界へと足を踏みいれた。

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