第9話

7話
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2020/03/09 03:00
終始、アイツの前で複雑な顔をしていたから、


絶対に、聞かれるだろうなって。


覚悟してた。


彼になら、言える。


それに、貸すときだけじゃなくて、


返すときにも気分が悪くなった。


コイツといると、私の大嫌いな冷やかしに会う。


一発殴って逃げてやりたかった。



その時に、彼は私の前に立って。
香川 立来
香川 立来
これ以上は、野暮だよ。
戸関 叶子
戸関 叶子
─────!
格好良かった。


伽噺とぎばなしの救世主みたいに、格好良かった。
その言葉で、涼も、
戸関 涼
戸関 涼
ごめんね。
って、戻っていく。


ごめんね、って。


何も知らないくせに、何も分からないくせに、


謝るな、偽善者。


こんな格好悪い姿見られて、


多分、涼のことを聞かれると思った。


優しいからこそ、気になるはず。


大丈夫、と、拳に力を入れた時だった。


香川 立来
香川 立来
さて、目立つことだし。
席に戻ろうか。

その言葉を聞いて、拳から、ふっと力が抜けた。
何も、聞かないの?
どうして貴方はそんなに気を使ってくれるの?
香川 立来
香川 立来
何かあるんだろぉなぁ~とは、思ってたけど。
戸関 叶子
戸関 叶子
ふふ、その香川くんの軽さ、
結構好きだよ。
気付いたら、口元が緩んで、本音が出ていた。
でも、言ってすぐに気付いた。

私、なんて恥ずかしいことを言ったんだ…!!
す、好きって言うなんて、何年ぶり?


というか10年位口に出してない…!


みるみる内に、耳も、頬も、


何もかも、熱くなって、


きっと赤くなってるのなんて、容易に想像出来た。
彼は、必死に身振り手振りで誤魔化して、


弁解する私に、
〝分かってるよ〟


って、優しく言ってくれた。
私は、どれだけ彼に優しくしてもらえば良いんだ。


甘えすぎだよね、きっと。
それでも彼の隣に居て、


彼と他愛の無い話をしていたい、


というのは、私の我儘になってしまうだろうな。
あれ、こんな感情、どこかで、読んだ気がする。
そうだ、この前の───────
恋愛──小説─────。
……まさか、まさかだけど。
私、かっ、香川くんに…
恋を…してしまったのだろうか…。



しばらく、何も頭に入ってこなかった。


それなのに、彼は平気そう…


いや、当たり前だ。


これが〝片想い〟…なんだよね。


そうか、


彼と蝶矢さんが話してるのを見て、


羨ましかったんだ。


そして、嫉妬を…してたんだ。


私もあんなに仲良くなれたらな。


彼と蝶矢さんは、どういう関係なのだろう。


とても、親しそうだった。


あぁ、頭が、パンクしそうだ…
恋、そうか、恋…。


分からない、知らない、は。



少し、怖い気もする────────

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