第14話

12話
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2020/03/17 14:44
『涼クンってカッコいいよね!』


『イケメンでスタイル良いって凄いなぁ!』





…カッコいいって、何が?


どうせ皆、俺の「顔」でそう言うんだ。


イケメンって凄い?スタイルが良い?だから?


生まれ持ってきたこの顔を褒められたって、


何の嬉しさも無かった。


生まれつき恵まれた体を褒められたって、


笑顔一つも出てこなかった。


特に憧れるものも無くて、


手探りで生きていた中学生活。


そこで、憧れたのが、


〝恋愛〟


だったんだ。


不純だ、なんて思われても構わない。


俺はただ、顔じゃなくて、心の中、


自分の中身を好きになってほしかった。


だから、色んな人に声を掛けて、仲良くなろうとした。


自分の運命の相手を探すために。


なんて、きっと打ち明けたら、


乙女だなんて言われるんだろうけど。
それの何が悪いんだ。


憧れを、好奇心を、抑えるわけに行かなかったんだ。


でも、その代償に失うものは大きくて。


『何か、チャラいし軽そうだよな』


『私だけを見て欲しいの』


軽い、ってなんだよ。


俺を知らないのに。


私だけを見て欲しい?


そんなの、本当に好きな人じゃないと無理だ。


止めようとも、辞めさせようとも、


道を阻もうとする人が、俺にはいなかった。
段々、笑顔は作るようになって、


人が喜ぶ言葉を掛けて。


これで良いんだろ。


お前らの好きな俺になれたんだ。


でもある日気付いてしまった。


彼女の言葉がキッカケで。
蝶矢 彩夏
蝶矢 彩夏
女を馬鹿にして見下してるんでしょ。
蝶矢 彩夏
蝶矢 彩夏
俳優でも気取ってんの?
俳優でも気取って、見下してる。


そんなの、俺じゃない。


人を傷付けたい訳じゃなかった筈で、


でもそれは、彼女にとっては傷を抉られていて。
彼女なら、俺に何かを掴めさせてくれるかも。
たまたま彼女だったから、とか。


そういう理由じゃなくて。
「蝶矢彩夏」だから、好きなんだ。


一人を除いて初めてだった。


俺のことを、そうやって軽蔑するのも。


俺という表の人間を、否定してくれる人。
たまに少し心が痛んでも、


本当に嫌われてるんじゃないかって、思っても。


そんな気持ち、笑顔で吹き飛ぶ!


本当に嫌いな人は、その人にそんな美しい、


曇りのない笑顔は見せないよ。


その笑顔を見る回数が増える度、


もっと彼女の隣に居たいって思う。


俺と同じ、作り笑いをする君じゃなくて。


俺も、君も、本当の、


心からの笑顔が、見たいから。



だから、隣に、居たいんだ。


君の笑顔も、君自身も、全部。



好きだから。

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