『涼クンってカッコいいよね!』
『イケメンでスタイル良いって凄いなぁ!』
…カッコいいって、何が?
どうせ皆、俺の「顔」でそう言うんだ。
イケメンって凄い?スタイルが良い?だから?
生まれ持ってきたこの顔を褒められたって、
何の嬉しさも無かった。
生まれつき恵まれた体を褒められたって、
笑顔一つも出てこなかった。
特に憧れるものも無くて、
手探りで生きていた中学生活。
そこで、憧れたのが、
〝恋愛〟
だったんだ。
不純だ、なんて思われても構わない。
俺はただ、顔じゃなくて、心の中、
自分の中身を好きになってほしかった。
だから、色んな人に声を掛けて、仲良くなろうとした。
自分の運命の相手を探すために。
なんて、きっと打ち明けたら、
乙女だなんて言われるんだろうけど。
それの何が悪いんだ。
憧れを、好奇心を、抑えるわけに行かなかったんだ。
でも、その代償に失うものは大きくて。
『何か、チャラいし軽そうだよな』
『私だけを見て欲しいの』
軽い、ってなんだよ。
俺を知らないのに。
私だけを見て欲しい?
そんなの、本当に好きな人じゃないと無理だ。
止めようとも、辞めさせようとも、
道を阻もうとする人が、俺にはいなかった。
段々、笑顔は作るようになって、
人が喜ぶ言葉を掛けて。
これで良いんだろ。
お前らの好きな俺になれたんだ。
でもある日気付いてしまった。
彼女の言葉がキッカケで。
俳優でも気取って、見下してる。
そんなの、俺じゃない。
人を傷付けたい訳じゃなかった筈で、
でもそれは、彼女にとっては傷を抉られていて。
彼女なら、俺に何かを掴めさせてくれるかも。
たまたま彼女だったから、とか。
そういう理由じゃなくて。
「蝶矢彩夏」だから、好きなんだ。
一人を除いて初めてだった。
俺のことを、そうやって軽蔑するのも。
俺という表の人間を、否定してくれる人。
たまに少し心が痛んでも、
本当に嫌われてるんじゃないかって、思っても。
そんな気持ち、笑顔で吹き飛ぶ!
本当に嫌いな人は、その人にそんな美しい、
曇りのない笑顔は見せないよ。
その笑顔を見る回数が増える度、
もっと彼女の隣に居たいって思う。
俺と同じ、作り笑いをする君じゃなくて。
俺も、君も、本当の、
心からの笑顔が、見たいから。
だから、隣に、居たいんだ。
君の笑顔も、君自身も、全部。
好きだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。