…凄く、ベタな告白だな。
あぁ違う違う、そうじゃないよ。
返事だよ。
まぁ決まってるけど。
いや、事実でしょ。
去年や、今年、同じクラスでもない。
ましてや話した覚えの無いこの人に。
はい、いいですよーなんて言えるか。
あ、逃げた。
ダサいなぁ。
言い返せなくて悔しいから逃げる。
やっぱカッコ悪。
少しでも期待した私を返してほしいわ。
まぁ逃げるのはまだ良い方だよね。
恨まれたりして殴りかかられたり、
諦めきれないとか言われるよりずっとマシ。
肩の力を抜くと同時に、偽る笑顔も消え失せた。
どうせここは旧校舎。
部活の人も体育館に籠ってるし、
誰にも見られないからね。
てか、アイツろくな奴じゃ無くないか?
サッと告ってフラれていなくなる。
罰ゲーム的なのだったのかな。
あ、それだと余計腹立つな。
下駄箱に戻ったところで気が付いた。
荷物教室に置いてきたままだったわ。
まぁ今日は特に何もないし。
強いて言うなら?知らない奴から告白された位で…
…もう1つ増えたっぽい。
うちの教室から丁度出てきた感じだった。
私は顔をしかめるのを堪えてんのに、
あっちは満面の笑みでこっちを見てくる。
言えるか、告白されてましたなんて。
考えたふりとか、青ざめたり、納得したり、
百面相した後にそう問われるけど。
何、当て付けか、当たってるけど腹立つわ。
思わず逃げようとした足を止めてしまった。
人間の不可抗力だろ、こんなの。
駄目だ、これ以上ここにいるとツッコミすぎて疲れる…
まさか帰る門同じで方向も同じなんてキセキあるわけ…
こんなにフラグ回収早いことある?
勘弁してください。
ニコニコで付いてくるアイツを引き離しながら、
早歩きで学校の外へ向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!