驚いて、頭が何も考えられなくなった。
でも、そういうわけにも行かない。
返事をしないと…
とは思うけど、少し嬉しくて。
こんな、冷たく何も出来ない私に、
好意を向けてくれる人がいたことに。
冷やかしとか、じゃなくて。
目を見たら分かる、本気。
しかも、そいつは、
私が厳しく言葉を掛けた相手で。
え?そういうヤツなの?
厳しいのが好きみたいな?
………と、どうやら違うようで。
付き合ってください?
───あの涼からそんな言葉が、
私に向けて、出てきたんだ。
しかも、いつもと違う真剣な目で。
まだ、私も、彼も、
お互いのことを全然知らないのに。
だけど、
せめても、って言ったら、失礼だろうか。
彼は、私なんかとじゃ釣り合わないし。
もっと可愛くて、大事にしてくれる人がいる。
今日や、前助けてくれたことも含めて、
多分めちゃめちゃ優しいのは分かる。
だから、こそだ。
私なんかに、
そういう期待させること言っちゃダメだよ。
精一杯だった。
きっと、悲しんでいるのかな。
それとも、嫌いになったかな。
いつも明るい声で名前を呼んで、
優しくしてくれて。
しつこいけどね。
諦めて、くれるなら。
それで良いんだ。
勝手にすれば、っていうのは、
引き離す意味で言ったのに。
『良いの!?』『し続ける!』……って。
ほんと、どんだけ優しいのかな…。
『友達』になることは、階段で表すのなら、
一段上に上がることが出来たのかな。
名前を呼ぶことは、更に上に行けたのかな。
こんな期待されない私に、
優しく優しく扱ってくれるのを実感したら、
顔も赤くなってしまった。
そうだ、最初から決め付けすぎていた。
人を信じて、大切にする。
そういう面は、まだまだ私達は青く、未熟だ。
だから、
いつか階段の一番上に来れた時。
貴方がまだ私を好きでいてくれたなら。
その時なら、もしかしたら、
私が貴方の隣に居たいと、
心から思えているかもしれない。
冷たい態度なのは、大切に思っているからだと、
いつか、言える日が、来たら良いな。
─────涼&彩夏────────END
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。