それからしばらく経って、
昼休みに、気付けて良かった。
〝腐れ縁〟って言っても、
何も聞かない、そこが優奈の良いところ。
秘密ごとでも、私が話したそうにすると、
しっかり聞いてくれる。
空気の読める優奈。本当に良い友達だ。
と、隣のC組に行き、中を覗くと、
いつも通り、居るわ、あの馬鹿。
やっぱり、寝てた。
からなのか、寝起きみたいに、
伸びた感じの気が抜けた声。
あ、まぁ気が抜けた声なのはいつもだけど。
ふわっと笑って、手渡してくる。
その笑顔に、私も自然と笑顔になる。
また、だ。
甘ったるい、声。
いきなり後ろからのその声に、また肩が反応した。
とにかく、とにかく逃げるように距離を取る。
その通り、その通りなんだけど、
毎回登場が……なんか怖い。
いや、今のは反射的にだ。
悪気はない。
私はバリアのように手をアイツに向けながら、
教室を覗く。
あれ?もう一人の戸関さんって女の子の方だよね、
噂によると、めちゃめちゃ顔が可愛いとか…
戸関(女子)さんの方の
こちらを向いた時に見えた顔は、
まるでモデルさんで、顔が小さくて、
可愛い、って言葉が本当に似合うほどだ。
でも、数秒後、
あの顔からそんな表情が出来るのか、
って程の、嫌そうな顔をした。
私のせいかな、とか、ネガティブに考えたけど、
どうやら違うらしく、
資料集を手に取って、力強く戸関(男)に渡した。
たかが資料集借りに来ただけなのに、
随分騒がしくなったな…と、
偽りじゃない、素の笑顔が溢れた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。