『愚問』
まさに貴方に当てはまる質問だった。
くだらない質問だ。
貴方は優しいから。
そんな私の妬んでいる事情なんて気にも止めずに、
アイツの意外性のことを、
面白おかしく話してくれて。
〝面倒臭い〟
私も勉強をそうやって投げ捨てられたら、
どんなに楽なのだろうか。
いや、実際香川くんは困ってる訳で、
それは失礼だよね。
でも、何とも彼〝らしい〟答えだ。
すると、突然のことだった。
何故、今その質問をするのだろう…
とか、不思議に思いながらも、
された質問は返さなければ…と。
答えていくと、
言いたかった言葉、
言われたかった言葉、
全部言って、優しく、
私の頭を撫でてくれていた。
自然にじわりと目の縁が熱くなって、
あぁ、堪えられないと思う。
でも、仕方無い。
自然に溢れてしまった。
どうしても、お礼を、
彼に誤解を与えないように、
泣きながらも弁解しようとした。
〝安心〟と同時に、
塞がっていた道と、心を。
つまり、〝不安〟を。
取り除いてくれたのが、
どうしても嬉しくて。
でも一度出てきた辛さは、中々引っ込まないし、
一度止まりかけた涙も、また落ちそうだったけど。
笑った。
辛くても、笑った。
すると、いつもふわりと笑う彼も、真面目な顔で、
うん、そうだよ。
彼が、格好良いと言ってくれたあの日から。
始まった、何もかも。
気持ちの変化も。
私なんかより、彩夏さんの方が、彼に合って、
彼と釣り合う。
それでも、伝えたい言葉が、
ふいに口出してしまった。
彼はとても驚いていた。
その顔を見た時、思わず声が震えてしまって。
それから、放課後。
いつもと全く違う、冷たい顔、声で。
呼ばれ、向かう場所も分からぬまま連れていかれ。
いや、どうせ断られるのは確定だと思っていた。
優しくて言い出せず、力んでしまうのも当然。
自分の気持ちを伝えて、
逃げようとした。
彼の口から聞きたくなかったのが本心でもあるけど。
……敵わない。本当に。
それから彼は自分を自虐して、
その言葉を聞いて、心臓が大きく跳び跳ねた。
恋愛小説でもよくある。
それでも、大袈裟だと思っていた。
なのに、現実で。
顔が赤くなって、しばらく言葉も入ってこない。
もう一度、『好き』を伝えると。
さりげなく、私のおでこにキスをして。
彼はそう言うと、小さくガッツポーズして、
私を包むように抱き締めた。
私は、思考が少しネガティブで、
いつも逃げようとしてしまうかもしれない。
でも、少しずつ。
彼の前では、貴方の前では。
逃げずに、立ち向かってみようと思うよ。
だから、
私に、笑顔と、幸せを、ください。
────叶子&立来────────END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。