第32話

30話─2つ目の話の終幕─
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2020/03/28 03:00
『愚問』


まさに貴方に当てはまる質問だった。


くだらない質問だ。


貴方は優しいから。


そんな私の妬んでいる事情なんて気にも止めずに、


アイツの意外性のことを、


面白おかしく話してくれて。





〝面倒臭い〟


私も勉強をそうやって投げ捨てられたら、


どんなに楽なのだろうか。


いや、実際香川くんは困ってる訳で、


それは失礼だよね。


でも、何とも彼〝らしい〟答えだ。


すると、突然のことだった。
香川 立来
香川 立来
家で勉強する?
香川 立来
香川 立来
塾とかは?
香川 立来
香川 立来
じゃあ授業聞いてる?
何故、今その質問をするのだろう…


とか、不思議に思いながらも、


された質問は返さなければ…と。


答えていくと、
香川 立来
香川 立来
じゃあそれは仕方無い!
香川 立来
香川 立来
戸関ちゃんと頑張ってるんでしょ?
香川 立来
香川 立来
大人は馬鹿だねぇ。
香川 立来
香川 立来
言われてるのにやってる戸関は偉いんだよ!
香川 立来
香川 立来
今までよく頑張りました。
言いたかった言葉、


言われたかった言葉、


全部言って、優しく、


私の頭を撫でてくれていた。


自然にじわりと目の縁が熱くなって、


あぁ、堪えられないと思う。


でも、仕方無い。


自然に溢れてしまった。
どうしても、お礼を、


彼に誤解を与えないように、


泣きながらも弁解しようとした。
〝安心〟と同時に、


塞がっていた道と、心を。


つまり、〝不安〟を。


取り除いてくれたのが、


どうしても嬉しくて。
戸関 叶子
戸関 叶子
今までそんなこと言ってくれる人…
周りにいなかったから…。(笑)
でも一度出てきた辛さは、中々引っ込まないし、


一度止まりかけた涙も、また落ちそうだったけど。


笑った。


辛くても、笑った。


すると、いつもふわりと笑う彼も、真面目な顔で、
香川 立来
香川 立来
でも、頑張ったことに変わりはない。
それでも続けて、続けて、
香川 立来
香川 立来
いつか見返してやる!!…位、
思ってた方が俺は格好良いと思うよ。
うん、そうだよ。


彼が、格好良いと言ってくれたあの日から。


始まった、何もかも。


気持ちの変化も。


私なんかより、彩夏さんの方が、彼に合って、


彼と釣り合う。


それでも、伝えたい言葉が、


ふいに口出してしまった。
戸関 叶子
戸関 叶子
……好きです。
戸関 叶子
戸関 叶子
…ぁ………ごめん、わ、忘れてね……
彼はとても驚いていた。


その顔を見た時、思わず声が震えてしまって。
それから、放課後。


いつもと全く違う、冷たい顔、声で。


呼ばれ、向かう場所も分からぬまま連れていかれ。


いや、どうせ断られるのは確定だと思っていた。
優しくて言い出せず、力んでしまうのも当然。
戸関 叶子
戸関 叶子
…覚悟は決まってるし。
自分の気持ちを伝えて、


逃げようとした。


彼の口から聞きたくなかったのが本心でもあるけど。
戸関 叶子
戸関 叶子
忘れてね。
香川 立来
香川 立来
逃げるな。
……敵わない。本当に。
それから彼は自分を自虐して、
香川 立来
香川 立来
迷惑なんて、思ったことない。
香川 立来
香川 立来
戸関が好きだからだよ。
その言葉を聞いて、心臓が大きく跳び跳ねた。


恋愛小説でもよくある。


それでも、大袈裟だと思っていた。


なのに、現実で。
顔が赤くなって、しばらく言葉も入ってこない。
もう一度、『好き』を伝えると。
さりげなく、私のおでこにキスをして。
香川 立来
香川 立来
戸関、俺と付き合ってくれる?
戸関 叶子
戸関 叶子
……よろしく、お願いします!
彼はそう言うと、小さくガッツポーズして、


私を包むように抱き締めた。




私は、思考が少しネガティブで、


いつも逃げようとしてしまうかもしれない。


でも、少しずつ。


彼の前では、貴方の前では。


逃げずに、立ち向かってみようと思うよ。


だから、


私に、笑顔と、幸せを、ください。





────叶子&立来────────END

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