さて、と。
うるさくイチャつくお二人さんを宥めた所で。
って、そんなこと言ったら、
半年ぐらい口聞いてくれなさそうだよねぇ。
まぁ実際そうなわけじゃんかぁ?
あの涼クンの好意は確実だし、
あとは彩夏だよねぇ。
まぁ頑張れって応援することしか出来ないけど。
いつも通り教室に入って、
いつも通り前の席の戸関に挨拶する。
だけど。
居なかった。
いつも誰より早く学校に来て、窓を開けて、
読書をしている戸関が。
まさか、風邪とか?
いや、風邪ならまだマシだけど、
何かあったのか…?
戸関は顔キレイだからなぁ…
襲われてたり…って!
俺は親か!!(会心のノリツッコミ)
あーあーやめよう。
俺はただのクラスメイトなんだから。
でも、朝の戸関との挨拶がないだけで、
こんなにもつまらなく感じるものなのかぁ…?
そして、予鈴が鳴った。
廊下にいる生徒はぞろぞろと中に入ってくる。
────────それでも戸関は来ない。
あと少し、もう少しで本鈴が鳴る。
ほんとに来ないのか…
俺が、一瞬下を向いていた時だった。
確かに前から椅子を引く音がして、
ほとんど反射の様に顔を上げる。
─────戸関だ。
良かった、何もなかったのか。
寝坊かな。
って、質問攻めにしてやりたいけど、我慢。
俺優しいからねぇ。お昼休みゆっくり聞こう。
それで、その日の午前中は、
変わりなく、いつも通り。
緩くだるく、眠りそうになりながら授業を受けた。
そして、待ってましたお昼休み。
いつもと同じ、クラスの皆が外遊びに向かう。
よーし、さりげなく…
って!!!どこ行こうとしてんの戸関!!
あっ、声漏れた。いや、そぉなるわ。
怪しい、なぁ…?
もうずっと前の席なんだから、分からないわけ無いでしょ。
それに、図書室行くなんて、有り得ない。
精一杯のあざとさで、戸関の泳ぐ目を見詰める。
良かったぁ。これで折れてくれなかったら、
もう何も言えなくなるとこだったわぁ。
戸関は、窓とは反対の方向、つまり右側を向いて座り、
目は下へ伏せながら、返事をした。
何故に敬語。
この動揺っぷり、さっきより泳ぐ目、
こ、これは、まさか…!!
戸関そんな大声出るのね…って位の声で、
バッ!!と顔を上げて見てくるから、
ちょっとびっくりする。
その後、戸関はまた下を向いてしまって、
俺は、よく分からんけどさ、
何か戸関自信が、小さく決意を固めた…
様に見えた気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。