第11話

9話
101
2020/03/11 03:00
さて、と。


うるさくイチャつくお二人さんを宥めた所で。


って、そんなこと言ったら、


半年ぐらい口聞いてくれなさそうだよねぇ。
まぁ実際そうなわけじゃんかぁ?


あの涼クンの好意は確実だし、


あとは彩夏だよねぇ。


まぁ頑張れって応援することしか出来ないけど。
いつも通り教室に入って、


いつも通り前の席の戸関に挨拶する。




だけど。


居なかった。


いつも誰より早く学校に来て、窓を開けて、


読書をしている戸関が。
まさか、風邪とか?


いや、風邪ならまだマシだけど、


何かあったのか…?
戸関は顔キレイだからなぁ…


襲われてたり…って!


俺は親か!!(会心のノリツッコミ)
あーあーやめよう。


俺はただのクラスメイトなんだから。
でも、朝の戸関との挨拶がないだけで、


こんなにもつまらなく感じるものなのかぁ…?

そして、予鈴が鳴った。


廊下にいる生徒はぞろぞろと中に入ってくる。


────────それでも戸関は来ない。
あと少し、もう少しで本鈴が鳴る。


ほんとに来ないのか…





俺が、一瞬下を向いていた時だった。


確かに前から椅子を引く音がして、
ほとんど反射の様に顔を上げる。
─────戸関だ。


良かった、何もなかったのか。


寝坊かな。


って、質問攻めにしてやりたいけど、我慢。


俺優しいからねぇ。お昼休みゆっくり聞こう。
それで、その日の午前中は、


変わりなく、いつも通り。


緩くだるく、眠りそうになりながら授業を受けた。
そして、待ってましたお昼休み。
いつもと同じ、クラスの皆が外遊びに向かう。
よーし、さりげなく…


って!!!どこ行こうとしてんの戸関!!
香川 立来
香川 立来
えっ…!
あっ、声漏れた。いや、そぉなるわ。
戸関 叶子
戸関 叶子
………っ……。
香川 立来
香川 立来
待った、どこ行くの?
怪しい、なぁ…?
戸関 叶子
戸関 叶子
えっ…あ、と…と、図書室に…
香川 立来
香川 立来
でも戸関が読んでる本っていっつも自分のでしょ?急にどしたの?
もうずっと前の席なんだから、分からないわけ無いでしょ。


それに、図書室行くなんて、有り得ない。
戸関 叶子
戸関 叶子
…きょ、うは、
ちょっと読みに行きたくて…
香川 立来
香川 立来
…行っちゃうのぉ?
精一杯のあざとさで、戸関の泳ぐ目を見詰める。
戸関 叶子
戸関 叶子
うっ。
香川 立来
香川 立来
はは(笑)観念しろぉ。
戸関 叶子
戸関 叶子
ご、ごめんなさい…
良かったぁ。これで折れてくれなかったら、


もう何も言えなくなるとこだったわぁ。
香川 立来
香川 立来
えっと…まぁ雑談でもしようよぉ。
戸関 叶子
戸関 叶子
うん…そうだね。
香川 立来
香川 立来
質問、しても良い?
戸関 叶子
戸関 叶子
は、はい。
戸関は、窓とは反対の方向、つまり右側を向いて座り、


目は下へ伏せながら、返事をした。
香川 立来
香川 立来
今日、朝、どうしたの?
戸関 叶子
戸関 叶子
あ…えっと、その、
昨日夜更かししちゃって…
香川 立来
香川 立来
そんなに熱中したことあったの?
戸関 叶子
戸関 叶子
新しい小説を読み漁っていたら…
香川 立来
香川 立来
ははは(笑)そっかそっか。
病気とか風邪とかじゃなくて良かったよ。
戸関 叶子
戸関 叶子
す、すみません…
何故に敬語。
香川 立来
香川 立来
んでぇ、何でさっき、
どっか行こうとしたの?
戸関 叶子
戸関 叶子
あ、え、そ、れは…
この動揺っぷり、さっきより泳ぐ目、


こ、これは、まさか…!!
香川 立来
香川 立来
────ハッ!!俺と話すの嫌になったとか!?ごめん気が利かないな俺!
戸関 叶子
戸関 叶子
違う違う!!それは!!
香川 立来
香川 立来
お、おぅ…そっかぁ…
戸関そんな大声出るのね…って位の声で、


バッ!!と顔を上げて見てくるから、


ちょっとびっくりする。


その後、戸関はまた下を向いてしまって、
戸関 叶子
戸関 叶子
うぅ…ごめんなさい…まだ…言えない。
香川 立来
香川 立来
…うん、そっかぁ。
戸関 叶子
戸関 叶子
き、聞き出さないんだ…
香川 立来
香川 立来
だって無理に聞いたらヤでしょ?
戸関 叶子
戸関 叶子
…ありがとう。
香川 立来
香川 立来
うぅん、でも、個人的に凄く気になるから、いつか話してね?
戸関 叶子
戸関 叶子
も、ちろん!それまでに何とかする…
俺は、よく分からんけどさ、


何か戸関自信が、小さく決意を固めた…


様に見えた気がした。

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