私の親友の優奈が、少し顔を赤くして言う。
優奈はそういう情報に詳しい。
そんな優奈が、悪い噂を言わないということは、
本当に何もないってことなのかな。
でも、そういう方が、いやらしい。
あんだけ笑顔と愛想振り撒いて、
馬鹿みたい。
顔と性格が比例するなんて現象、
起こられたらたまったもんじゃないっつの。
肩が跳ねる程驚いた。
私と優奈の後ろから、ニコニコの笑顔で覗いていた。
声は甘く、綺麗な声だ。
顔やスタイルも、その辺のアイドルと変わりない程。
聞かれてたとは…まぁでも、
これくらいで引き下がったら、
私もその辺の女と同類だ。
驚きと不気味さで頭がいっぱいになりすぎて、
少し口が悪くなって、煽る感じになったけど、
言いたいことを言うんだ。
それでも、笑顔は絶やさない。
…………は?
…………は?
あぁ、ちょっと、
このタイプは。
私が、一番嫌いなタイプじゃないか。
間髪入れずに『何で』と、笑顔で聞いてくる。
もうこれじゃあ自分でも止められないから。
言わせてもらうしかないけどさ。
吐き捨てる様に冷たく言って、
その場をすり抜けて行った。
優奈も戸関涼に一礼して、こちらに走ってくる。
この言葉は、
逃げるように早歩きで行く彩夏の耳には、
届いていなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!