第7話

5話
140
2020/03/29 11:32
それから授業後、


もちろん、資料集を返さなければいけない。
先生がいなくなったのを見計らい、


C組を覗いて、立来を手招きした。


流石に名前で呼んで、騒がれたりでもしたら、


変な噂を流されるに違いない。


しかも顔の良い、天然イケメン野郎のこと。


私が悪役側に回されるだけだ。
香川 立来
香川 立来
はいはぁい。
蝶矢 彩夏
蝶矢 彩夏
ありがと、助かった。
香川 立来
香川 立来
いぃえ~
この会話だけなのに、だけの筈なのに──────
今回はもう驚かない。後ろに気配を感じたのと、


私の先に視線が集まってたから。
戸関 涼
戸関 涼
かーーのっこー!
資料集ありがとー!
戸関 叶子
戸関 叶子
………死ねばいいのに…。
凄い呟くような声だったけど、


彼女の声は響くような透き通る声だから、


結構こっちまで聞こえた。


いや、同感です。
戸関 涼
戸関 涼
ちょっ、聞こえてるよ!!
mob
えっ!何々!?
mob
涼くんと…戸関さん!?
そういう、感じなのかな…
mob
ヒューヒュー!
mob
涼アイツバカだろwww
あぁ、騒ぎ始めた。


こういう茶々入れて、何が楽しいんだか。


それで笑っていられる、この馬鹿も馬鹿だ。


またより嫌いになる。
戸関 涼
戸関 涼
ちがうよー!(笑)ねー!叶子?
戸関 叶子
戸関 叶子
…黙れ、早く帰れ。
戸関 涼
戸関 涼
きびしっ。
あれ、
香川 立来
香川 立来
まぁまぁ戸関。
私、この中で空気だ…


でも、どうしよう。


今ここで抜けたらおかしいよね…
蝶矢 彩夏
蝶矢 彩夏
……えっと…
香川 立来
香川 立来
良いよ、今戻っちゃえ。
蝶矢 彩夏
蝶矢 彩夏
あ、うん、ありがと。
香川 立来
香川 立来
いいんだよぉ。
ほんと、こういうとこ優しいんだよね。


ここに居づらい空気を察して、


『良いよ』って。


私は気を使ったり、空気を読むのが苦手だから、


よく邪魔になる。


そういうとき、助けてくれるのが立来だ。






    立来side
───まぁ、こういう冷やかし?


とか、あんまり好きじゃないんだよねぇ。
香川 立来
香川 立来
ほらほら、空気読みなよ、涼クン。
戸関的にも、これ以上ここにいるのは野暮だよ。
戸関 涼
戸関 涼
───!そうだね、ありがとう。
戸関 涼
戸関 涼
ごめんね、叶子。
戸関 叶子
戸関 叶子
良いから視界から消えて。
戸関 涼
戸関 涼
…ごめんね。
彼の「ごめんね」は、心から言ってる感じだった。


寂しい、辛い、そんな感じの。


それが演技かどうかは分からないけど、


いつもキラキラ笑顔の涼クンから、


笑顔とは別の、辛そうな顔を見ると、


少し、可哀想に見えてくる。
香川 立来
香川 立来
さて、目立つことだし。
席に戻ろうか。
戸関 叶子
戸関 叶子
え……あ、うん…。
香川 立来
香川 立来
あれ、もしかして今のは聞いて欲しかった感じ?でも嫌そうだよね…
あ、あれ、この空気は聞いてほしくなさそうな…


違った?俺、選択を間違えたかぁ…?(笑)
戸関 叶子
戸関 叶子
えっ!…じゃなくて、うぅん、
気を使ってくれてありがとう。
香川 立来
香川 立来
やっぱり?何かあるんだろぉなぁ~
とは、思ってたけど。
戸関 叶子
戸関 叶子
ふふ、その香川くんの軽さ、
結構好きだよ。
───────ん?
香川 立来
香川 立来
…!///…そ、そっかぁ。
戸関 叶子
戸関 叶子
え?何か…あ。/////ち、違うよ!
そういう意味じゃなくて…
香川 立来
香川 立来
うん、分かってる。ありがとう。
…その、照れた赤い顔は…



反則だと思うけどなぁ。




と、俺は耳と頬が熱くなるのを隠すように、


窓の外を眺めるフリをした。

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