第29話

生きる道
243
2021/12/10 07:00
蝶屋敷ー夜ー
無一郎
無一郎
……って感じで、最後は炭治郎が頸を斬り落として終わったよ。
無一郎は、あの時の出来事をみんなに話した。
しかしその内容は、強い鬼があらわれ、なんとかして鈴鹿と協力して倒したというストーリーになっている。
鈴鹿が危険に晒されないようにと、彼なりの気遣いだ。
煉獄
煉獄
うむ、そうだったか。3人とも帰ってきてよかった。
甘露寺
甘露寺
そういえば、炭治郎君と鈴鹿ちゃんはどこにいるの?
実弥
実弥
悲鳴嶼も見つからねーな。
無一郎
無一郎
炭治郎は怪我の手当。他2人は付き添い。
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炭治郎と悲鳴嶼は、別の部屋で作業している。
悲鳴嶼
悲鳴嶼
…これで大丈夫でしょう。
悲鳴嶼は箱に札を貼り終える。
箱の中には、あの鬼の腕が入っている。
鈴鹿
鈴鹿
封印は終わりましたか?
鈴鹿が入ってくる。
炭治郎
炭治郎
鈴鹿さん、はい。ご覧の通り。
炭治郎は箱を鈴鹿に渡す。
炭治郎
炭治郎
ずっと探していたものがみつかったんですよね。
鈴鹿
鈴鹿
…ありがとうございます。
悲鳴嶼
悲鳴嶼
では、私はここで失礼します。
悲鳴嶼は、部屋から出ていった。
鈴鹿
鈴鹿
悲鳴嶼さんは本当に気遣いが上手い方です。
炭治郎
炭治郎
生きててよかったです。腕を斬ったら体が消滅したので死んでしまったと思ってました。
鈴鹿
鈴鹿
腕を切られたくらいでは死にませんよ。…流石に痛かったですが。
炭治郎
炭治郎
あはは……。
炭治郎
炭治郎
あっ、草早丸は…あのかけらはどうするんですか?
鈴鹿
鈴鹿
妖刀は血を吸えばまた再生します。気にしなくて大丈夫です。
炭治郎
炭治郎
そうですか、よかった…。
炭治郎
炭治郎
……鈴鹿さん、あの答え、見つかりましたか?
鈴鹿
鈴鹿
はい、ちゃんと見つかりました。ですが、この答えは永遠に変わり続けるでしょう。
炭治郎
炭治郎
そうですか…。
鈴鹿
鈴鹿
そういえば、産屋敷さんから鬼殺隊に入らないかとまた誘われました。
炭治郎
炭治郎
ど、どう答えたんですか?
鈴鹿
鈴鹿
はっきり断りました。
鈴鹿は笑顔をみせる。
炭治郎
炭治郎
なんで…?
鈴鹿
鈴鹿
私は私の野望のために刀を振ります。だから鬼殺隊には入りません。私と鬼殺隊の目指す世界は違いますから。
炭治郎
炭治郎
…残念です。
鈴鹿
鈴鹿
任務にはたまに参加しますし、また共闘の機会もあるでしょう。
炭治郎
炭治郎
っそうですね!
2人は楽しく会話を続けた。
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数日後ー夜ー
鈴鹿は久々に自分の家で一夜を過ごす。
縁側であぐらをかき、瞑想を行なっている。
そこに、ひとつの気配を感じた。
鈴鹿
鈴鹿
…黒死牟ですか。
黒死牟
黒死牟
…はい。
黒死牟は、鈴鹿の後ろに立つ。
鈴鹿は、見向きもせずに会話を続ける。
鈴鹿
鈴鹿
久しぶりですね。
黒死牟
黒死牟
はい…。
鈴鹿
鈴鹿
何をしにきたのですか?
黒死牟
黒死牟
…あの日の答えを、聞きにきました。
鈴鹿が黒死牟達から去る時に放ったあの一言。
「貴方にはわからない、わからないし、わかって欲しくない。」
鈴鹿
鈴鹿
……そうですね。
鈴鹿
鈴鹿
私は、貴方を愛していました。貴方と刀を交える時、貴方は日に日に強くなっていき、嬉しかった。
鈴鹿
鈴鹿
それが貴方の、努力の結晶だから…。
鈴鹿
鈴鹿
ですが…。私は、人の道を歩むことを決めました。
鈴鹿
鈴鹿
貴方には、私のように自分に失望してほしくない。自分の努力を否定したくなかったのです…。
黒死牟
黒死牟
……私は、貴方に心底憧れていた。ですが…憧れとは、理解と程遠い感情なのだとあの時わかってしまいました。
鈴鹿
鈴鹿
そうですね、わかり合えなかったからこんなことになったのでしょう。
鈴鹿
鈴鹿
ですが、私は今の暮らしは、嫌いではありません。
鈴鹿は立ち上がる。そして、黒死牟の方を向く。
鈴鹿
鈴鹿
貴方は貴方の信じる道を行きなさい。それが自分で選んだ道だというのならば、私は何も言いません。
鈴鹿は部屋の中を目指して足を進める。
鈴鹿
鈴鹿
私達はいつか戦う運命にあります。その時が来たら、またあの時のように、手合わせをしましょう。
鈴鹿は黒死牟を通り過ぎる。
黒死牟
黒死牟
はい。
鈴鹿が部屋に戻った時は、黒死牟の姿はなかった。
鈴鹿はそのままちゃぶ台の前に座る。
ちゃぶ台の上には、あの鬼の腕が入った箱が立てかけられている。
鈴鹿が欲しかったのは、鬼である自分の姿ではなく、「鬼の腕」そのものだ。いつか自分の望む世界を実現させるために、鬼の腕…相棒と共に戦える日を夢見て、鈴鹿は刀を振るのだろう。
鈴鹿は猪口をふたつ用意し、ひとつは自分の前に、もうひとつは箱の前に置く。
そして酒を注ぐ。
生き方など、人によってコロコロと変わる。しかし、どんな状況であろうと、自分の道を信じる。それが大嶽鈴鹿の生き方だ。
鈴鹿
鈴鹿
お帰り、我が相棒。
鈴鹿は猪口の蓋どうしをコツンを合わせる。
その様子を月明かりが照らしていた。

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