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第11話

⭐️
749
2022/12/19 11:50
ここの家に住むということで2階の部屋に案内された。その部屋はしばらく誰も住んでおらず、壁一面の本棚と机とベットの3つだけが置かれているだけで殺風景だった。
掃除手伝おうか?
乾さんが聞いてくれたけど、これくらいの部屋ならすぐに掃除は終わる。掃除機と雑巾だけ借りて水道の位置を教えてもらった後、私は掃除を始めた。掃除が終わったら、下にある荷物を全部持ってくると言ってくれたので、早く終わらせようと腰くらいまである髪を高い位置でお団子にして袖を捲って掃除を始めた。窓を開けると東京とは思えないほどの爽やかな空気が来て驚いた。棚とかの上を水拭きしてその後に掃除機をかけた。1人部屋にしては結構広い部屋だったけど、意外とすぐに掃除は終わって換気をしている。そんなとき私は地元に思いを馳せていた。
嫌いだったけど、一応ここまで育ててくれたお母さん。反対に目にかけてくれるけど、あんま帰ってこないお父さん。中学で私をいじめ抜いた同級生たち。もう会わないのかと思うとせいせいしてきた。家出をすると宣言したにいちゃんの部屋では確か果汁100%のジュースとグミを出してもらっていたような記憶がある。夏休みエアコンの効いたにいちゃんの部屋で。そして今日、乾さんに拾われる?まで私はもう自死を選ぼうとしていた。私がいなくなったところで、何にもならないしむしろ喜ぶ人の方が多いんじゃないかって思ってた。けど、ここにきてにいちゃんに再会してみんなにあったかく迎え入れられて嬉しかった。
入っていい?
乾さんが私がドアを開け放しているのにも関わらずちゃんと聞いてくれた。
あなた
どうぞー
あ、掃除終わったね
あなた
そうだね。うん、終わった
よかったよかった。
ぞれじゃあ、あなたの下の名前ちゃんの夢って何?
あなた
夢、か。
もう達成できたから今はもうないよ
なになに?
興味津々に聞いてくる。会って数時間の感想でしかないけど、多分乾さんって相手に嫌な思いをさせることなく色々聞き出せるような人だなと思った。だからこれまでのことを一切合切話してもいいんじゃないかと思えてしまった。
あなた
家出すること
乾さんはもちろん驚いたような顔をしてなんでなんでとさらに突っ込んで聞いてくれた。
あなた
両親は多分私にあんま興味なくて、っていうと語弊があるんですけど、母は私に全く興味を示さなくて私の記憶の中では。で父はあんま家に帰ってこなくて。でもお小遣いは結構くれてそれでどうにかなってました。って感じで家にあんま居場所がない訳ですよだから家出するのが夢でした
そっか〜
相槌を打つ乾さんの顔は心なしか曇って見えた気がした。
じゃあ、また新しい夢作ったら?楽しくなりそう
ワクワクした声で言ってくれた。私を気遣ったのか?それなら申し訳ないけど気にしないことにした。
あなた
そうですね。見つけたら言います
じゃあ、面接の時に言ってた動画編集って?
あなた
TikT○kのことですか?
そうそれ
あなた
“あなたの下の名前のひらがなの部屋“って名前でVlogみたいなの投稿してたんですよ。このスマホ1つでできたんでストレス発散がてら
私はそれを開いて乾さんに見せた。自慢じゃないけど、フォロワーさんは結構いる。
え、待って俺フォローしてたんだけどw
あなた
マジですか!
世界は狭いなと思いながらも急に恥ずかしくなった。
2週間くらい前にさ、家出しますっていうの出してたじゃん?どこにいくのかなーって思ってたんだよね
あなた
あ、あの恥ずいんで忘れてください
忘れないよと笑われたけど忘れて欲しい。これがデジタルタトゥーかと今、よくわかった。
須貝
リュックとキャリーケース持ってきていい?
須貝さんがやってきた。
あなた
あ、お願いします。でも結構色々入ってるので重いと思います。だから中身崩しながら持ってきていいですか?
須貝
おん、ええよ。俺らも手伝うし。なぁ、乾
うん。手伝うから安心してね
あなた
じゃあお言葉に甘えて。お願いします
部屋に本棚があるから持てきたものというか詰めてきたものは結構紙類があるので、持てくるのが実は重かった。

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