★前回のあらすじ
遂に交流会当日。野薔薇ちゃんの盛大な勘違い等はありましたが、如何やら京都高専の生徒達がやってきた様です…。
そう言い放った真希に応える様に、京都校の生徒達が現れた。
そんな台詞を言った女子生徒は、何処となく真希と雰囲気が似ている。此の人が恵や野薔薇が話していた、真希さんの双子の妹かな、と、鏡花は思った。
多分、此の人とは仲良くなりづらいだろうな…と、少しだけ苦手意識をもった。
其の直ぐ傍に居る、筋肉質で大きな身体の男子生徒が、「乙骨居ねぇじゃん」とぼやいた。
他にも、着物を着たお坊さんの様な身なりの男子や、箒をもった魔女風の女子、ロボット…?
東京校もそうだが、中々に濃い面子である。
そんな中。
見覚えのある水色の長髪を見つけ、鏡花は嬉しくなった。
野薔薇がイライラした様子を全開にして、菓子折りを要求する。其れに棘も乗っかってしまい、鏡花は大柄な先輩…東堂に心の中で同調した。
ぎゅっ、と箒の柄を握り締める金髪の魔女…西宮は、恐る恐るといった体で、野薔薇たちを見やる。
ロボット…メカ丸が此方を向いてそう言う。
「ロボだ、ロボが居る!!」と野薔薇が騒ぐが、めちゃくちゃ共感した。
僧侶風の格好をした生徒…加茂の吐いた言葉に、真依は小さく舌打ちをする。
舌打ちに気付いた加茂に、素っ気なく返事をする真依。
霞が「まあまあ」と間に入って止めるが、正に一触即発の雰囲気。
鏡花が気まずくなり始めた其の時。
凛とした声が響き、京都校の引率、庵歌姫が古びた石階段を上って来た。
呆れた様に溜め息を吐いた後聞かれた言葉が、誰の事を指してるか嫌でも分かった。
真希に関しては、もう隠す事なく「バカ」と言ってしまっている。其れに冷静に突っ込む恵。
現代最強の特級術師は、生徒公認のバカと化した。
…其の時。
ドドドドドド
…何か来た。
良く言えばマイペース、悪く言えば自分勝手な統一感のない、其の場に居る全員の心の声が、初めて一致した瞬間だった。
先程ブイブイ言わせていたバカ、五条悟が何やらキャスター付きの大きな白い箱をとてつもない勢いで転がしながら迫って来た。
パンダや野薔薇、棘は巻き込まれそうになって慌てて避ける。
片やチッと舌打ちをし乍ら睨み付ける歌姫、片やパッと顔を輝かせる霞、思っている事は同じなのに、此れ程迄に違いが出る事を、鏡花は初めて目にした。
ガラガラガラ…と箱を押しながら此方に向かって来る五条。パンダも「急に語り始めたぞ」と若干引き気味だ。
「はい、お土産」と、五条は何とも形容し難い表情をした人形を取り出し、京都校の生徒に配っていく。
五条の言葉に、怒った口調で応える歌姫。
何だかんだ言って、親しい間柄なのかもしれない。尚、仲良くはなさそうである。
ぐりんっという効果音が聞こえて来そうな位に方向転換する。隣から野薔薇の呆れた声が聞こえてきた。
…鏡花も同調した。
生徒皆に白い目で見られ乍も、五条のテンションは変わらない。
…ゾワッ
魔都・ヨコハマの裏社会で、嫌でも身に付けられた鏡花の気配を読む能力はホンモノだ。
特級術師である五条が、此の気配を感じ取れない筈が無いのに。
五条の傍の白い箱から、確かに気配がした。
…微かだが、おどろおどろしい気配も。
無意識に、何時も首から下げている携帯電話に手を掛ける。そんな鏡花を、恵は不思議そうに見つめた。
バゴッ
とてつも無く大きな音がして、箱が内側から開いて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。