そうこうしているうちに雄英高校にたどり着いた。
ところどころに雄英高校の生徒を見つけたが、ヒーロー科の生徒はいたのだろうか。
一度目にしたことがあるとはいえ、あまりに大きな門に圧倒され萎縮していると、
「あー!A組かー!!どんなクラスだろう!?」
と、大きな声が聞こえてきた。
同じA組。ば、と後ろを振り向くと、そこには特徴的なピンクの肌と髪を持つ、黒目の女の子がいた。
その隣を歩くのは、紅いツンツンヘアーの男の子。
呆然と見つめるオレの横を通り過ぎ、2人はずんずんと進んでいく。
もしかしたら、もう場所を知っているのだろうか。
実は極度の方向音痴のオレは、こそこそと(多分)クラスメイトについていくのだった。
◇
やっと着いた大きなドア。
『……バリアフリー』
途中でツンツンくんと黒目ちゃんと離れてしまったオレは、迷いまくりながらなんとかここまでたどり着いたのだ。
がら、と大きなドアを開けると、
まだガラガラの教室。
ひとはほんの数人しか来ていないようだった。
糸井、糸井…と自分の名前を探す。
糸井、はドア近くの、一番後ろの席だった。
すすす、と席に着く。
前の席の飯田、は男の子だろうか、女の子だろうか。
もし女の子だったら、仲良く話せるだろうか。
一人で座っていると、ぐるぐると不安が渦巻いて
どうしようもなかったので、
オレはすぐに持ってきた本の世界に逃避した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。