雄英高校ヒーロー科、1年A組5番。
まっさらな男子制服・・・・に身を包み、オレは高校に向かう電車に乗っていた。
朝早いからか、電車はあまりこんでおらず
人の少ない車内でふう、と息をつく。
(…どんなクラスなんだろう)
この個性で、渡り合えるのだろうか。
こんな個性的な個性、ほかにないよな。
(なんで、こんな個性、に、)
ぼんやりと、昔のことを思い出していた。
◇
小さい頃から何度も思った、中学生の時に封印したはずの言葉。
後ろ向きになるから、個性を恨んだって仕方がないから。
なんていう理由は後付けで、ほんとうは
『そんな個性の自分を惨めだと思いたくなかったから』だ。
羽を生やして飛ぶ子、大きな爪と牙を持つ子、水を作り出して操る子。
いいなあいいなあ、と友達の個性をみていつも羨んだ。
『私にもそんな個性でないかな』
毎日、目を輝かせながら口にした望みは、粉々に打ち砕かれた。
きらきらと輝いて見えた友達の個性が、急に禍々しいものに見えるようになった。
4歳のオレにはなかなかにキツイことだった。
「憧れのヒーローに、私はなれない」
そんな現実を突きつけられた。
結局は、長所でも短所でもある諦めの悪さで、
ヒーローになることを夢見るわけだけど。
〝私だけ〟こんな個性で、〝私だけ〟ヒーローを目指せないのが
ただひたすらに悔しかったのだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。