電車の中でも話題は絶えない
ずっとファンだったから
すごくびっくりした
わたしがそう言うと
俺もびっくりしたって
あなたが言う
「 付き合わん? 」
長い沈黙が続いて
またあなたは口を開いた
「 ダメかな? 」
またびっくりしてた、
わたしが笑うと釣られて笑った
愛しいと思った。
冗談混じりに話す姿
キレイな瞳
スラッと伸びた指
微かに香る香水
このひとが、大好きだ。
わたしの全部が
わたしの中で叫んでた
ホテルまで歩くとき
自然と手は繋がってて
お互い呼び捨てになって
ホテルの前で別れるときは
どちらからともなく
唇を重ね合わせてた。
バイバイ、ありがとう
わたしは歩き出す
いきなり手を引かれて
気付いたらすっぽり腕の中
「 もう少し一緒がいい 」
いたずらに笑うあなたに
胸の奥が熱くなった
「 キスしていい? 」
ダメって言ったら?って
わたしが聞くと少し考えて
無理矢理しちゃうって
またわたしの好きな顔で笑う
わたしはこれからも
この笑顔が大好きなんだな
そう思っていると
あなたは大人なキスをする。
どうせ他の子にも言ってる
他の子にもしてる
遊ばれててもいいや
心のどこかに浮かんだけど
すぐに消えてしまった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!