全部話し終わったとこで
紫耀くんが口を開いた
「 自分的にはどうしたい? 」
わたしは―
答えようとすると
わたしの携帯が鳴った
れん。
紫耀くんと会ってることは知らないから
自然なタイミングで電話に出る
「 今から行くわ 」
少しだるそうに言う
またなんか嫌なことがあったんだろうな
すぐそう思った
そういう感情が
あなたは分かりやすいから
「 もし遅れたらごめん。
適当になんかしといて 」
ツーツーと機械音が流れる
なんか少し寂しくて
ため息が出る
「 なんか分かるわ。
機嫌悪いと冷たいもんな 」
紫耀くんが優しく言うから
わたしは泣きそうになる
2人で喫茶店を出て
あなたとの待ち合わせ場所まで行く
少し喋ると
じゃあまたって紫耀くんの後ろ姿。
いつまでもいつまでも
わたしはその背中を見つめてた
なんで紫耀くんじゃなかったんだろう
なんで廉なんだろう
心が叫んでた。
あんなに大好きだったのに
あんなに愛してたのに
今はもう
特別に見えたりしない
あなたと見てた世界
全然キラキラしてないよ
音楽プレーヤーで曲を聞き出して少しすると
わたしの視界に不機嫌そうなあなた
「 ただいま 」
しかめっ面のあなたのマフラーを巻き直しながら
おかえりって微笑んでみる
嬉しそうに笑うあなたを見て
わたしも少し気が楽になる
機嫌の悪いあなたと一緒にいると
ケンカにしかならないから
もう、全部分かっちゃう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。