カラオケを出て渋谷駅。
君が切符を買うために
手から離した大きい荷物を
さり気なく持つ
「 あ、ごめんな。
ありがと。重くない? 」
僕は君のスーパーマンだから
重くなんてないのさ、なんて
かっこつけて言ってみる
ばーか。って君は
満更でもなさそうに笑った
「 山手線って
大阪でいう環状線やなー 」
車内に表示されてる
液晶を真剣に見つめてる
僕が話しかけると
今頑張って覚えてんの
って怒られた
炭酸一気飲みして
ゲップ出さずに一周全部言うつもり?
そんな冗談も今は
怒られそうだから胸に閉まった
最寄りに着いて家まで歩く。
今回は珍しく
僕の家にお泊まりするって
いつもはホテルとって
僕のことなんてほっとくくせに
君はまだ
山手線の駅の名前を言って
難しい顔をしてる
原宿渋谷品川東京…って
駅数少なすぎでしょ。
ふたりでマンションに戻った。
「 おじゃましまーす 」
そう言って君はなぜか床に座り込んで
廉の部屋変わんないねって
僕はソファーに座って
冷えるからおいでって君を呼ぶ
いいって首を横に振る君の手を
無理矢理に引っ張って
ソファーまで連れてく
変態って僕を見つめながら
君がつぶやくから
優しくキスをして、
会いたかったって抱きしめた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。