新海「あすか先生、今お時間大丈夫ですか?」
あすか「はい。何ですか?」
藍沢「これ見てくれ。」
あすか「脳腫瘍…2.5㎝か…。これがどうしたんですか?」
新海「この患者、1年前にも3.5㎝の脳腫瘍で摘出したんだけど……。」
あすか「この患者、いくつですか?」
藍沢「あすかと同じ16歳だ。名前は田口剣。」
あすか「田口剣……。どっかで聞いたような……。」
藍沢「何か分かるか?なぜ1年で再発したのか?」
あすか「これって頭部CT、MRIだけですよね?」
新海「そうです。」
あすか「頭部だけではなく全身もお願いします。」
藍沢「分かった。」
そして、全身のCTとMRIを撮った。
新海「うーん、頭部以外何ともないように見える。」
藍沢「ああ。」
あすか「ジーーー〈一点を見つめている〉」
藍沢「何を見ている?」
あすか「ここ。」
あすかが指を指したのはなんと骨。
藍沢「まさか、骨肉腫か?」
あすか「はい。…これが原発だと思います。」
新海「それで1年で再発したのか…。」
あすか「はい。」
事務「すみません。冴島あすかさんは…。」
あすか「私ですが…。」
事務「先ほど、ある方からあすかさんいますか?と聞かれまして…。」
あすか「そうでしたか。名前は聞きました?」
事務「はい。田口拳と名乗っていました。」
あすか「分かりました。ありがとうございます。」
あすか「藍沢先生、新海先生。田口剣さんって骨髄バンクに登録してますか?」
藍沢「いや、してなかったはずだが……。」
あすか「じゃあ、今すぐ登録させて下さい。」
藍沢「分かった。」
あすか「新海先生は田口拳さんの全身のCT、MRIをお願いします。」
新海「分かった。でも何で?」
あすか「もし、何も異常がなくて田口剣さんとすべてが同じなら骨髄移植が出来ます。」
新海「え?」
藍沢「どういうことだ?」
あすか「いいから、至急調べてください。」
新海「分かった。」
藍沢「…………。」
そしてあすかは脳外科を出た。
すると、後ろから声をかけられた。
??「君、あすかちゃん?冴島あすかちゃんだよね?」
あすか「はい、そうですけど…。どちら様ですか?ってつるぎ君?」
剣「うん、そうだよ。保育幼稚園以来会ってないから10年ぶりだね。……あすかちゃんもこの病院に入院してたんだね。」
あすか「えーと、私入院してるんじゃなくて……。」
剣「イタタタタ。」
あすか「頭痛いの?」
剣「うん…。また頭にガンが出来たみたいで……ってあすかちゃん分からないよね…。」
あすか「…………。〈苦笑い〉そういえば、こぶし君、元気?」
剣「うん、昨日もお見舞いに来てくれて。」
あすか「そうなんだ…。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。