三井「ところで、あすか先生今いくつ?」
あすか「15歳です。」
三井「え?」
あすか「でも大丈夫ですよ。ちゃんと大学まで出てますから。」
三井「15歳で大学卒業したの?」
あすか「はい。それも医学部首席で卒業しています。……私は保育幼稚園までは日本にいましたが、小学校からは外国でした。小・中・高・大の一貫校で。」
藍沢「あすかはなぜ医者になったんだ?」
あすか「私の家族は父・兄・姉って医者で、私もお医者さんになりたいと思ったのがきっかけです。……だから私が父に小学校から外国の小学校に行きたいって言ったんです。そして外国に行く前の日、私は父から言われてもう一人お姉ちゃんがいることを知ったんです。」
藤川「それってはるかのことか?」
あすか「すみません。名前までは…。でもそんな感じ?だったような……。」
藍沢「名前、聞かなかったのか?」
あすか「はい。何しろ私の父はもう他界してます。それに兄・姉は結婚して新しい家族、新しい生命がいるので、私が外国から日本に帰国してから一度も会ってません。」
藍沢「それで?」
あすか「日本に帰国してすぐ、私は黒田先生の右腕として黒田先生が作った診療所で働いていました。」
緋山「ねえ、あれから家族と会ってないなら家、どうしてたの?」
あすか「私の家は黒田先生の診療所でした。」
三井「ってことは、あすか先生今住むところ無いの?」
あすか「ありません…。」
三井「本当はお姉さんと一緒の方がいいんだろうけど…。」
あすか「でも、お姉ちゃん結婚してるから…。」
藤川「なんで、結婚してるって分かるの?」
あすか「ふふ、秘密です。」
冴島「それはこれでしょ。」
藤川「え?はるか?」
白石「冴島さん、大丈夫?」
冴島さんが見せたのはペンダントにした指輪だった。
冴島「はい、大丈夫です。…でもなんで私がもう一人のお姉ちゃんだって分かったの?」
あすか「だって、この前久しぶりに小学校に行く前の家に行ってみたの。それでね、アルバム見つけて、見てたらもう一人のお姉ちゃんが写った写真があったの。……でもどこにいるか、分からなかったし会ったこともないから、半分諦めてた。」
緋山「でも、あの現場で見つけた。」
あすか「はい。あの写真のお姉ちゃんと全然変わってないから。」
冴島「え?」
あすか「あの、医学部に入るのに一生懸命だった、制服の。」
冴島「え、恥ずかしい。って私あれから変わってないの?」
あすか「うん。面影残ってる。」
白石「じゃあ私が前に住んでた家使って?」
あすか「え?」
白石「だって、私は藍沢先生と結婚して藍沢先生の家にいるし、緋山先生は新海先生と結婚して新海先生の家にいるから、貸家状態だったのよね…。あすか先生が使ってくれるなら。」
藍沢「いいんじゃないか?そこで女子会とかすればいい。」
横峯「是非、私達も女子会呼んでください。ほら、雪村さんも。」
雪村「もっとあすか先生のこと知りたいし……。」
灰谷「僕も…。」
名取「俺はいいや。」
あすか「……はい。白石先生、白石先生の家、使わせて頂きます。」
白石「え、本当?」
あすか「はい。」
白石「じゃあ、今日日勤だから一緒に帰ろう。」
あすか「はい。」
橘「ところであすか先生、白石教授オペしたってほんとなのか?」
白石「え、父のオペ?」
あすか「はい。肺癌がステージダウンしてすぐ。」
橘「白石教授がオペ後の縫い目が目立たず綺麗だ。と絶賛していたぞ。」
あすか「そうですか。でもあのあと肝臓に転移してしまって…。」
白石「それでも、少しだけ生きられる時間を延ばしてあげられたなら良かったんじゃない?私も良かったと思ってる。」
三井「じゃあ、あすか先生。今日は疲れたでしょ?今日はゆっくり休んで、来週からたくさんオペしてたくさんヘリに乗って、沢山救える命を救いましょ。」
あすか「はい。」
そして名取先生は名取総合病院に戻った。
こうして、長い長い1日が終わった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!